新潟動物ネットワーク No.122 |
||
|
||
保護犬を通して犬を学ぶ |
||
2003年3月、高速道路で保護された柴犬の女の子を譲り受けたことでNDNの会員になり、その数年後、犬班の活動をお手伝いするようになった。 熱い思いのバトンによって私の所まで縁を繋いでくれたNDNスタッフさん。 NDNの「1匹でも多くの命を救いたい」という熱い思いのバトンを引き受け、バトンを託された者として、岡田代表、皆さんと共に活動を始めたいと思った。(昨年末に諸事情でスタッフを引退。) 一時保護者として、たくさんのわんちゃんと関わってきたが、問題を抱える子と接する機会が多く、スリリングな経験もさせていただいた。 「嫌なことは、唸るか噛みつけば避けられる」と覚えてしまった子も居た。ひどくなった理由のひとつは、叱り方で「叱られている」と感じずに、「攻撃的にされている」との誤解からである。愛情不足な上に間違った叱り方(しつけ)が原因だと思う。 臆病な子はもちろん、気が強い子も厳しく叱り過ぎては信頼関係など築けない。 わんちゃんは大好きな(信頼しきった)人間を本気で咬むような行為はできないと私は思う。 現在、2012年10月にセンターから引き出したマルチーズ♂7才(保護名こはく)をお預かりしている。 センターでは素行が悪く譲渡不可となり、NDNに話が来た子である。犬舎での判断はできないと思い、職員さんに相談して書類を出し、1週間程自宅で様子を見ることにした。 コハクもかなりのつわもので、嫌なことは噛みつけば避けられる。叱られる=攻撃される。さわられる=嫌なことがある、と学習している。そしてスイッチが入ると何度も執拗に咬み付く野獣。俺は最強と思っている勘違いわんこ(笑) 体は2.4㌔と小さく、本気で咬まれても大したことは無いので、悩みながらも保健所へは戻さなかった。 少しでも改善できればと、今井訓練士さんのグループレッスンで、人間では教えられない犬社会も学ばせて頂いた。自称最強犬は6ヶ月のラブラドールに挑み、何度も小突かれ敗北感を味わい、私に助けを求め、功を奏した。他の飼い主さんからおやつを貰ったり、犬同士の挨拶も交わせるようになって、私を頼り、顔つきが優しくなってきた。 タッチングで、どこでも触れるようになり、最初、グローブを着けてのタッチングを思い出すと笑ってしまう。今も気難しいところはあるが、呼び戻し、待て、フセ、ハウスなど、屋外でもコマンドをしっかり聞き、超甘えん坊と可愛く、許容範囲と思っている。(今も膝の上で寝ている。) わんちゃんに関しての本やホームページには様々な情報があり参考になるが、一見良い方法にみえても違う本があったり、ホームページには逆のことや批判まで出ていたりする。 「犬に舐められるな」、「リーダーになれ」、という説話にとらわれて、無理にわんちゃんをひっくり返したり(アルファーロール)、マズル(鼻面)をつかんで嫌がることを無茶したり(マズルコントロール)。わんちゃんはその人間を好きになるはずは無いし、身を守るために牙を剥くことにもなるだろう… 育った環境が特殊であったり、年齢、素性不明である保護犬と上手く付き合っていくには、なぜそうなるのかを、まず自分や環境を見つめ、保護犬を見つめ、保護犬の気持ちを読み、お互いを認め尊重しながら共存していこうよ、というのが望ましいスタンスなのだと思う。力ずくで上下関係を築くのではなく、自然に保護犬がこの人間を信じようと思わせること。怯える、唸る、咬むのスイッチを押させないことで、保護者も保護犬を信頼する。 人間側が良かれと思った行為でも慣れない保護犬には迷惑千万なことが沢山ある。 『群れのリーダー』にあまり囚われることなく、わんちゃんを従順に従える方法はあるのではないかと思う。 人間とわんちゃんは上下関係だけでなく、友達関係(横並びの関係)も上手に作れるのではないか。保護犬を観察していると常に何らかのボディランゲージやサインを発している。 なんとな~く保護犬の感情が伝わって気持ちが読めるような… 服従心も大切。でも全てではないと感じる。 咬み癖などの問題行動が原因でセンターへ持ち込まれるわんちゃんも少なくない。 飼い主も悩んでセンターへ連れてきたと思うので(思いたい)、飼いきれないと諦める前に、是非、専門家に相談して飼い続ける努力をしてほしい! プロでも無い私が、問題児の成犬を一時預かりできるのだから、仔犬から飼った飼い主が扱えないはずが無いと思う。最期まで飼い続けるためにも犬を学んでほしい! 如何なる場合があろうと、最後の最後まで飼い主が責任を持ってあげることが飼っているわんちゃんに対する愛情だと思う。 |
||
(右端がこはく。認知症で徘徊する柴犬ひなに襲いかかるのに、くっついて寝ます。) |
||
新潟動物ネットワーク/犬班(元) 野澤 美穂 平成26年3月1日掲載 |
||
|
||
|