新潟動物ネットワーク No.92 |
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『同伴避難』~~家族だからずっと一緒~~児玉小枝著~~出版に寄せて |
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“同伴避難“が世に出る日を心待ちにしていた一人として、モノクロ写真と文章で構成されている本を手にした時、何度となくマスメデアに放映された置き去りにされ途方にくれる多くの犬猫の『助けて!助けて!』と声なき声が心に響いて来ました。 NDNは、ペット同伴で避難されて来た方々へのいろいろな面での支援活動を行って来ており、児玉小枝さんの取材の案内役を三条市文化体育センターと寺泊にある長岡市の避難所である夕映荘の担当をさせて頂きました。 大阪から車で幼い娘さん同伴で4月9日の早朝から走って来られ、11時間後の夕方に岡田代表の案内で新潟市体育館の取材をされ、翌日は娘さんを幼稚園に預けて、三条市と寺泊の避難所回り、午後3時からNDNスタッフ森井里花さんの案内で新潟市西スポーツセンターでの取材、夕方には車で大阪へ帰られるという超強行軍のスクジュールでした。その2日間の取材から大切なメッセージを社会へ発信する力のすごさに、ただ感心するばかりです。児玉さんは、2003年9月28日に行われましたNDNフェステバル『一緒に考えようてみようよ、動物たちのこと』におけるシンポジウム“動物愛護~それぞれの立場から“にパネリストとして参加して下さり、同時にラストポートレート写真展を開催しました。この時はシングルでいらっしゃいました。 今回、このような仕事をするきっかけはどんな事ですか?とお聞きしましたら、ある小さな雑誌の記者をしている時には、陽の部分――つまりペットと暮らして楽しいとかを発信して来て、ある日ゴミ袋に入った犬の死骸が道端に放置してあるのを発見して、ショックを受けこれが現実なんだ――それから”陰の部分“を発信して社会へ問題提起をして行きたいと考えるようになったと言われました。 3月11日から人生に激震が起こった方々の話の中で、原発事故による避難命令で最初は、 福島県内の体育館に10日間ほど避難、そこは体を横たえるスペースも無い程のすし詰め状態だったと、その後行く先も告げられず自衛隊の隊員輸送車に乗せられ、新潟県のあるパーキングエリアで、民間の大型バスに乗り換えさせられ、その車中で初めて行く先を告げられたとお聞きしました。その話を聞いて、ユダヤ人が列車に押し込められてアウシュビッツへ輸送される映画の場面を重ねて、どんな恐怖と混乱が心を押しつぶしていただろうと津波が街を押し流した光景の壮絶さと共に言葉を失くしてしまいました。 避難所訪問をする中で、ペットを連れて来れなかった方に、運搬の手段が無ければ、こちらで運搬のお手伝いをしますからと伝えても帰って来る言葉が、『もうあきらめた。』『家も何もかも震災でめちゃめちゃで自分たちの生活で手いっぱい――』 同伴避難された方々には、ペットとの強い絆を断ち切る事の出来ない愛情の深さを感じます。 新潟県へ避難して来られ、福島県のペットへの対応との極端な違いに驚かれ、また県や新潟市と連携支援をしている獣医師会やボランテァへの感謝の声を多く耳にしました。ペット同伴避難を許さなかった自治体の責任者及び職員全てと全国の自治体の関係者にこの本を読んで頂き、防災マニュアルにペットの救済方法を織り込んで頂ける事を願ってやみません。 またペットと暮らす全ての人に読んで頂き、自分だったらどうするのか?と自らに問いかけ、日頃の心構えと有事の備えを考えるよすがにして頂きたいと思います。 「同伴避難」紹介URL http://www.nihonshuppansha.net/archives/2011/0805_000000.html |
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新潟動物ネットワーク 犬班 阿部慶子 |
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平成23年9月1日掲載 | ||
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