新潟動物ネットワーク No.102 |
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NDNフェスティバル「震災を考える」を終えて |
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NDNフェスティバルが無事終了しました。 今年のメイン企画は、カメラマン 太田康介さんによる 『のこされた動物たち 福島第一原発20キロ圏内の記録』写真展でした。 東日本大震災と原発事故がなければ、 決して起こりえなかった現実を切り取った写真たちです。 太田さんは、震災直後から、福島第一原発の警戒区域内に 残された動物たちへの給餌、レスキュー活動をされています。 私は、2011年の5月ごろ太田さんのブログを知りました。 取り残された動物たちがいることは知っていましたが、 生々しい写真と現状を伝える文章に、ショックで数日間何も考えられませんでした。 野生化してゆく元飼い犬たちや、数滴の水もなくなり餓死する家畜たち。 先進国であるはずの日本でこのような残酷なことが起こっている現実が信じられず、 正直「見なければ良かった」と思ってしまったのも事実です。 それでも、自分にできることは何か考え、 とりあえず太田さんのブログをプリントアウトし、職場で回覧しました。 数々の現実を見てきているであろうカメラマンの太田さんが 「地獄」と呼ぶその光景は、あまりにも痛ましく直視できないものです。 ブログや書籍で見るよりも、イベントで展示する1枚のパネルになると 訴えてくるものの大きさに圧倒されました。 無人の町に横たわる、骨と皮だけの死体。 死を待つしかない牛の瞳。 ライトに照らされた、夥しい豚の死体。 来場者の方やスタッフも言葉をなくし、 涙を流して帰られる方が本当に多かったです。 その後、20キロ圏内犬・猫救出プロジェクト 大網直子さんと中島徹さんの解説による、ビデオ上映が行われました。 誰もいない民家の周りに、数匹で群れをなす犬たち。 自分の住む新潟市と同じような風景ですが、そこに映っていたのは 明らかに異質な世界でした。 大怪我をしながらも大網さんたちによってレスキューされた1匹の犬や、 ある老犬の死、そして何ヶ月も耐え抜いた猫と飼い主さんとの再会など、 淡々と福島のリアルを映す画面に、 会場からは啜り泣きの音が絶えませんでした。 県外の友人に言われたことがあります。 「新潟県は、動物愛護が進んでいて本当に羨ましい」 その一端が見えるような、新潟県職員 川上直也さんの講演。 二度の震災を経験し、そこから得た教訓を生かす新潟県は 被災者にも被災動物にも本当に優しい県なのだと再認識しました。 会場では、そんな新潟県で同伴避難をされていた飼い主さんの 写真展も同時開催しました。 また、『三日間の避難生活で動物に必要な物』の展示など、 来場者さんへの意識喚起も行い、大変有意義なイベントになったと思います。 ビデオ上映の最後に、太田さんが作られた 大網さんの活動のスライドショーを見せていただきました。 本当に温かく、同志への敬愛に満ちた素晴らしいものでした。 太田さんや大網さんたちは、決して「動物を救う為に選ばれた人間」ではありません。 私たちと同じように、普通に生活をしている方たちです。 そういった方たちが立ち上がらなければ、福島の動物たちは 一匹も救われませんでした。 被災地では、まだまだ何も終わってはいません。 どうか、ほんの少しの興味から持っていただき、 一人でも多くの方に現実を知って欲しいと思います。 最後になりましたが ご来場頂いた皆さま、本当にありがとうございました。 |
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新潟動物ネットワーク イベント班 長谷川淳子 |
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平成24年7月1日掲載 | ||
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