新潟動物ネットワーク No.70 |
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「猫にピアス」 |
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私の家の外には綺麗なトラ柄の猫がいます。小柄で毛並みも良く、クールビューティーとでも言いましょうか、整った小顔の彼女はいわゆる野良猫というやつで、左耳にはビーズのピアスをしています。猫にピアス、と聞いてもピンと来ない方のほうが多いでしょう。今回は、なぜ彼女がピアスをすることになったのかをお話したいと思います。 彼女の名前は「ママちゃん」といいます。去年の春、まだまだ寒さを感じる頃に、初めて私の家の前に現れました。ご飯をあげると、その後もちょくちょく顔を見せるようになりました。暖かくなってきたころ何日か来ない日が続きましたが、もともと野良猫なのでそれほど心配はしませんでした。 しばらくして久しぶりに家に来たママちゃんは、少しほっそりしていて、それまで玄関の前で食べていたご飯をどこかへ持って帰るようになりました。当時は「野良だから」という理由で、ほっそりしたこともご飯のテイクアウトも深く考えはしなかったのですが、実はこのときに、別の場所で出産・子育てをしていたのです。 その後、徐々に私たちを信頼するようになったのか、ある日、仔猫を4匹連れてきました。ピョンピョンと跳ねるように走り回り、何にでもじゃれて遊ぶかわいらしい仔猫たちでした。そして数ヶ月、親子でうちの車庫で暮らし、ママちゃんは突然、姿を消してしまいました。仔猫たちを残したまま。猫の子離れ、特に野良猫の場合は、急激で厳しいものだそうです。昨日まで優しかったお母さんが急に猫パンチで仔猫を遠ざけようとしたりします。可哀想なようですが、これが動物の本来の姿ともいえるのです。 親のいなくなった仔たちのご飯と寝床の面倒だけでも、と思って育てる決心をしました。家の事情で屋内飼育が出来なかったので、車庫の中に毛布を敷いた二階建ての小屋を用意し、メスの仔猫には避妊手術を受けさせました。 残念ながら4匹のうち2匹が亡くなりましたが、なんとか寒い冬を越し、ホッとひと安心していた頃のことです。あのママちゃんがある日突然戻って来たのです。 「久しぶりじゃーん!」「元気だったのー?何してたのー?どこにいたのー?」と思わず矢継ぎ早の質問攻めにし、「まあまあ、とにかくご飯でも食べな!」と急いでフードを用意しました。まったくこっちのペースです。「これじゃあ、そこらの世話焼きおばちゃんだわ・・・」と自らに苦笑いしつつも、そうせずにはいられませんでした。ママちゃんは毎日、ものすごい勢いでご飯を食べました。また親子してここで暮らす気になったのかなーなどと、のん気に構えていたのですが、しばらくするとまた彼女は数日間、姿を消しました。 ふたたび戻って来た彼女は何となく痩せていて、気付いたらご飯をくわえて・・・って、前にどこかで見た光景でした。もしかして、とは思いながらどうすることも出来ず、さらに数日が経った頃です。彼女の近くに3匹、ちっちゃくてピョンピョン跳ねるヤツが・・・・ 「コレ ハ マズイ ゾ ・・・・」 猫の繁殖力の強さは聞いたことがあったので、どうしたらいいのか、その日から本当に悩みました。このままでは、前と同じように仔猫を置いて出て行くだろうし、いくら仔猫に避妊・去勢手術を受けさせたところで、またママちゃんがどこかで妊娠すれば、仔猫が増えるばかりで、これはただの悪循環でしかない、と。彼女の為にも避妊手術を受けさせようと決めました。 メス猫の避妊手術には、望まない妊娠を避ける他にも、発情期のストレス軽減、子宮疾患や乳腺腫瘍の予防等のおまけが付いてきます。例えば、猫の乳腺腫瘍は80~90%が悪性、いわゆる乳癌ですから、そうならない為にも早めに避妊手術はすべきだと言えます。もちろん飼い猫にも同じことが言えるわけで、出産させるつもりがないなら是非お勧めしたい処置です。 まずはインターネットでいろいろなことを調べました。自分と同じような経験をした人がどのように解決したのか、動物病院に相談してよいものなのか、等々。そして最後にNDN(新潟動物ネットワーク)に辿り着きました。 メールで事情を説明すると、捕獲方法から手術に協力的な病院の紹介まで、大変な協力をしてくださいました。捕獲器もお借りして、いざ!と思ったものの早速のトラブルです。何しろママちゃんは生粋の野良ちゃんだったので、怖いくらいに勘がよく、捕獲しようと思った頃から家に近寄らなくなってしまいました。「お願いだからもっと油断して~」と訳のわからないお願いをしつつ、結局捕獲に2ヶ月近くかかりました。 野良猫に、避妊・去勢手術を受けたかと尋ねても、大半の猫は答えてはくれないでしょう。特にメス猫の場合は外見から判断することが難しいので、二重の手術を避けるために目印をつける必要がでてきます。耳の先端部分をV字にカットしたり、背中にマイクロチップを埋め込んだりという方法を以前きいたことがありました。しかし、耳カットは、毛が伸びるにつれ分かりにくくなる可能性があり、炎症の心配もある、また、マイクロチップはそれぞれに対応した機械がないと調べられない等のデメリットがあります。そんな理由で、担当の獣医さんはママちゃんにピアスをつけてくれたのです。術後「かーわいいじゃーん!」と彼女に声をかけてみましたが、相変わらず反応はクールでした。 現在はママちゃんと彼女の子どもたち、その他1匹が家のまわりで暮らしています。時々自分たちが捕まえた獲物(もぐら・鳥・ネズミなど)をおすそ分けしてくれる、何とも義理堅いヤツらです。いつも「お気持ちだけで・・・」と、私が埋葬することになるのですが・・・・ 野良猫の平均的な寿命をご存知でしょうか?実は3~4年といわれています。これに対して、家で飼われている猫は年々長生きの傾向にあり、20歳近くまで生きる猫が少なくありません。これは、彼らが「のら猫」という種類の猫だから、という訳ではなく、外敵に襲われたり感染症にかかったり、また交通事故に遭う確立が非常に高いために出る差なのです。 野良猫すべてに飼い主を探すのは、実際には難しいことです。だからせめて繁殖制限をすることによって、不幸な命を増やさない努力をしなければいけません。もともとは人間の勝手で捨てられた命から始まった問題ですから。 ママちゃんのことがきっかけでNDNと関わりができ、わたしはメンバーに加わりました。これからは、野良ちゃんたちに新しい人間の家族と、冬の寒さや雨風をしのいで警戒心を解き安心して眠れる場所を紹介する、『世話焼きおばちゃん』になりたいと思っています。 |
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新潟動物ネットワーク/猫班 喜藤 美沙子 |
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平成21年11月1日掲載 |
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新潟動物ネットワーク 090-2844-4881 メールndn2@ndn2001.com http://ndn2001.com 新潟県動物ネットワークさんから、切実なメッセージを戴きました。 もう一度ペットとはを考えてみませんか・・・・ ※里親になってくださる方はこちらから※ http://www17.plala.or.jp/ndn/ |
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