新潟動物ネットワーク No.106 |
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涙の数は人間のためより動物の方が多い |
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私は、高柳町山中に生まれ育った。私が暮らした家は藁で覆ってあり、壁は土壁、広い土間。にわとり、猫が居て動物達と過ごしていた。東京住まいの叔父が来る度に猟犬を連れて来た。あの時は名前が分からなかったが、ダルメシアンという大型犬だった。古いアルバムをめくってみると、先祖の方々も家族も、牛や犬のそばで写真を撮ったり、猫を抱いて撮ったりが多くあった。 結婚して動物を飼うことはないと思って諦めたが、私が次男を出産後、思いの外パニック障害を発病。外が怖くて外出が出来ず、ひきこもり状態だった。四歳の長男、一歳の次男は外で遊びたい年齢。悩んだ所、愛犬家の姉に「犬を飼ってみたら」と勧められて、ブリーダーからビーグルのチョビを我が家へ迎えた。薬を持ち歩きながらも、チョビを世話しているうちにだんだん元気に回復していった。 犬の力がすごいと感動した私。 大げさに聞こえるかもしれないが、あの頃はパニック障害の病名がまだ知られていない為、周りから理解してもらえず、情報も少なかった時代だったから。永久に一人で外出は出来ないと、旅行好きな私だけど一人で出かけるのは永久にないと諦めていた。チョビのおかげで外出が出来るようになった嬉しさは言葉だけでは足りないほどすごく嬉しかった。 犬に恩返ししたいと思った。 チョビを通して犬、猫の現実問題を知り、心を痛めた。お手伝いしたいと思って活動の場を探した。ある日、新潟日報『キャレル』を読んだら、NDN代表の岡田さんの記事に出逢った。自分の考えと共感できた。早速、新潟市のイベントへ行って申し込んだ。あれから色々な事情を抱えてる動物を世話させてもらっている。その中から紹介したい。 【クサ亀 年齢不明・エンジェル】 次男の小学校の玄関先に大きな水槽があった。かなり汚れており、石だけにしか見えなかった。でも私が水槽の前を通る度に石と思い込んでいたものが亀であり、何故か亀の悲鳴が聞こえた。水槽が汚れてるのが気になって、廊下ですれ違った教師に亀の事を話して「何とかしてあげてください」とお願いした。教師は「分かりました」とおっしゃったが、次の日に見に行ったら、汚れた水槽のまんま。二匹の亀の視線が私に向かっていて「助けてくれ!」というのが聞こえた。 私は生まれた時から耳に音が全く無く100%聞こえない。でも亀が私に訴えている。教師が水槽の前に通るとただの石に変身する。じっとして居られなくて、教頭先生に許可を頂いて水槽を洗って、ぬめりだらけの亀をきれいに洗って戻して餌を与えた。新聞に「亀にサルモネラ菌がある」と記事が出た日に職員会議があり私の家へ連絡来た。「サルモネラ菌が心配なので亀を引き取ってもらえないか」という内容。小学生に命を教える立場なのに無責任さに腹を立てたが、長男次男がお世話になってる学校なので強く言えず、二匹の亀を迎えに行って引き取った。 エンジェルは賢い。猫がうらやましいと思ったのか、自分の住まいの場所から自分で重い戸を開けて、猫たちの居る居間に入って一日中猫たちと過ごして夕方になると自分の場所へ戻る。初めて出逢った時はつり上がっていた目だったが、九年経った今はまん丸になって穏やかな表情しているエンジェル。 【プリタニー・スパニエル 年齢不明・こころ】 修業先の師匠から「夜中に愛犬を散歩中、駅裏に太いチェーンで縛り付けられて捨てられた犬を発見。保護してるが、愛犬が吠えるから一緒は無理。一時保護をお願い」と連絡が来て、見に行ったら、痩せこけて皮膚アレルギーなのか皮膚が真っ赤になっていた。毛並みがかなりひどくて、目が濁っていて「もう先は長くないだろう」と印象を受けた。新しい里親さんに渡すのは難しいだろうと判断して引き取った。大出血したので病院で調べたら、子宮癌を患っていた。飼い主 さんは治療費が嵩むから捨てたではないかと思う。 「手術しても助からないだろう」と獣医さんから言われたが「意識が戻って目を開けた」と夜中にFAXが来て、こころの生命力に驚いた。失明すると言われたが、きれいに治って元気になったこころ。私以外の人にはまだ怯えてるけれど、私の言葉をよく理解するのに驚いた。 【白黒猫 年齢不明・とら】 飼い主さんが「入院するから退院まで一時保護をお願い」と言って体格が大きな白黒ねこを我が家へ連れてきた。うちが初めてなのに、態度が堂々して玄関先から猫用水の場所に向かって水をおいしそうに飲んで、猫用トイレへ向かって用を済ませて、やれやれとため息をした白黒猫。態度の大きさに先住猫たちが驚いたのか、目を見張った。私も驚いた。まるでうちが自分の住まいと思ってるのか、堂々としていた。飼い主さんからなかなか連絡が来なくて、こちらから連絡したら、もうすでに退院していた。「事情があって世話出来ない」と言われて唖然。里親さんが見つかってもらわれていったが、先住猫、先住犬に喧嘩を売って怪我させた。「迎えに来てくれ」とクレームの電話が来て迎えに行き、里親さんに謝ってうちへ連れて戻った。うちでは先住猫に溶け込んでいい子してる。里親さんのお話は何だろうと不思議に思いながられっきとした女の子だけれど、体格の大きさと堂々としてる態度を見て「とら」と名付けた。こころがうちへ来てから10日後とらを家族に迎えた。 みんな事情あってつらい過去を背負う子ばかりですがみんなに罪ありません。 人間の世話をしてくれる人は十分程、大勢います。 私は病気をしてから人に会うと気を使って疲れますが、動物は裏がないのでリラックスさせてくれます。 愛情は見返り求めない。あげっぱなしの愛情でみんなのお母さんになりたいと思っています。 ★中越沖地震の被災猫 アメリカン・ショートヘア・桂ママ。一時保護中、我が家で私の誕生日に赤ちゃん猫を産みました。赤ちゃん猫は里親さんにもらわれていきましたが、たった四年で永眠。 ★新潟市秋葉区にあった、あの多頭飼育現場で過ごした柴犬・むく。一時保護して、姉が引き取ってかわいがってもらっています。 ★野良猫の母猫が産んだ子猫。椋といいます。 ★野良猫・母猫。胡桃と名付けました。次男の同級生のお母さんが自宅の裏庭に母猫が子猫を産んで一時保護したが「威嚇されるし、懐かないから見てやれない」と突然、我が家へ連れてきました。幸い、野良猫だった胡桃が先住猫たちの中に溶け込んで仲良くしてくれるので安心しています。写真は先住猫(三条市出身で、新潟動物ネットワークからもらった野良猫だったカーチャン)とくつろいでいる胡桃。もう少し落ち着いたら避妊手術させます。 |
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新潟動物ネットワーク 木村 美津 |
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平成24年11月1日掲載 | ||
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