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暮らしの中のどうぶつたちを考える
~加勢牧場見学会~
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NDNでは、日頃、伴侶動物、愛玩動物である犬や猫を中心に活動していますが、4月に行われた「暮らしの中のどうぶつたちを考える勉強会」以来、少しずつペット以外の動物を学ぶ機会を設けています。畜産動物は「食」として身近でありながら、動物たちがどう過ごしているのかを、日頃、知る機会はほとんどありません。
8月12日、和島村でガンジー乳というイギリス原産の珍しい牛を飼育している加勢牧場さんを訪問しました。加勢牧場は気持ちの良い風が通る山の中にあり、ガンジー乳を日本で唯一卸販売している牧場です。
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加勢さんは現在65歳。酪農の道に入った当時は50頭ほどのホルスタインを中心に飼育していたそうですが、酪農は大変な重労働で、生涯を酪農家として過ごすためにどうしたら良いかを考えて、出逢ったのがガンジー乳だったそうです。通常、ホルスタインは3歳くらいで廃牛となります。これは、毎日30~50ℓ近くの乳を絞ることで自分の体を消耗していくためで、人間が乳量を増やすことを目的に品種改良を続けた結果です。
ガンジー乳は体も小さくホルスタインの半分以下の乳量しかとれないものの、平均して9歳ほど、中には14歳近くまで現役の牛もいるそうです。味は美味しく、高脂肪なのにさらっとしているのが特徴です。牛乳は1ℓ 1200円。付加価値をつけるために始めたアイスクリームやソフトクリームが大ヒットして、今があるそうです。最初の牛はみちるちゃんと名付けて14歳近くまで生きました。夫婦で飼育できるのは最大20頭と決めて今は16頭を飼育しています。
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牛をどう飼うのが正しいのか、という答えはないそうです。
加勢さんの場合は「美味しい乳製品を作ることが基本」、そのためにどうしたら良いかを考えているそうです。例えば、我々動物愛護の観点からは、牛を自由に放牧させて欲しいと思いますが、搾乳の時にフリーにしていると雑菌がついて、結局、抗生剤などの薬を使うことになります。加勢さんは搾乳期の10か月はストール飼育(つなぎ飼い)をして、出産前の2か月間は放牧しています。といっても、通常の牛舎に比べれば大変広いスペースが与えられて、ハンディのある牛はフリーストールで飼育するなど、細やかな配慮をしていました。抜き打ちの保健所検査で大腸菌がいると一発でアウトですが、抗菌剤などの薬剤は一切使っていないそうです。ヨーロッパではストール飼育は動物愛護に反するため廃止の方向に進んでいて、日本も将来的には変わってくるのかもしれないという話も伺いました。
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訪問時は2頭の牛が牧場で過ごし、牛舎の牛たちも大変穏やかで、好奇心旺盛、異常な常同行動はもちろんありませんでした。驚いたのは牛舎特有の臭いがほとんどなく、浄水器を完備したことが大きいとおっしゃっていましたが、話をしながらも、気づくと糞を片付けたり、清潔な環境を心がけているのがよくわかりました。牛の世話はご夫婦二人でやっています。犬猫と比べるのもおかしいですが、大変な労力と休むことのない日々の作業を考えたら、消費者として深い感謝の気持ちが湧きました。また、適正な価格を消費者が理解することはとても大切だと思いました。
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3年後にはオリンピックが開催されます。アニマルウェルフェア(AW)が畜産動物の調達基準の要件となる絶好の機会ですが、現段階では、近年、オリンピックを開催したどの国よりも、日本の取り組みは遅れているそうです。私たちの食卓に上がる畜産動物たちが、5つの自由(*)に満たされるよう、多くのみなさまに関心をもって欲しいと思います。
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*5つの自由
①飢え、渇き、栄養不良からの自由
②恐怖、苦悩からの自由
③物理的、暑さ寒さ不快からの自由
④苦痛、障害、疾病からの自由
⑤正常な行動を発現する自由 |
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新潟動物ネットワーク/代表
岡田朋子
平成30年9月1日掲載 |