新潟動物ネットワーク No.168 |
そとねこ病院 HOME |
私が生まれ育った町は、野良猫の多い田舎町でした。 幼いころの私の日課は、毎日学校の帰り道にいる野良猫たちに、給食の残りや家のおやつをあげることでした。 外の猫たちの生活は過酷です。病気や飢え、交通事故などで、面倒を見ていた多くの猫たちが亡くなり私のもとを去りました。当時の私にとっては、忘れがたい悲しい思い出です。 「野良猫は拾ってきちゃダメ」「野良猫はその辺で死んでいくもの」 たくさんの大人たちに、毎日そう言われ叱られました。 しかし猫たちは生きています、命あるものたちです。彼らはどうしていけば良いのでしょうか? その答えを見つけるべく、私は獣医師になることを決意しました。 |
(生後半年で交通事故のため下半身不随となった3本足の「ずり」。外の過酷さを感じます。 我が家に家族として迎え、今では一緒に暮らしています。) |
念願の獣医師になり、今年の夏に主人の転勤で東京から新潟へとやってきた私は、私なりの答えを形にしました。それが、「そとねこ病院HOME」という動物病院です。 この病院は、野良猫や地域猫など外で生きる猫たちの不妊手術専門病院です。 関東にはこのような病院がいくつかありますが、新潟では初の試みです。 猫の繁殖力はすさまじく、1ペアの猫は1年に2回・多ければ一度に5、6頭ほど出産します。それぞれの子猫たちも、半年ほどで繁殖できるようになります。そのまま際限なく繁殖し続けると、最初は2匹の猫たちは1年ほどで約30匹にも増えるのです。 増えすぎた猫たちは、餌を求めて喧嘩をしたりゴミを漁ったり、あちこちでトイレをしたりします。このような野良猫の被害による苦情が行政へ殺到し、対応を迫られる行政は殺処分をせざるを得なくなります。 つまり、野良猫による苦情も殺処分も、猫が増えすぎていることが大きな原因となっているのです。猫は野生動物ではありません。家畜として数千年前から人間と生活を共にしてきた彼らは、人間と共存しなければ生きていくことはできません。そのため、人間と共存できる範囲内に数をコントロールすることが必要です。 不妊手術は、野良猫問題や殺処分に関する問題を解決するための重要な手段ですが、数頭ずつ実施しても猫のすさまじい繁殖力には到底およびません。重要なのは、一気に・大量に、外の猫たちに不妊手術を実施することです。このために、不妊手術専門の動物病院が必要であると感じました。 これが、獣医師となった今の私の「答え」です。 |
東京都では小池百合子知事が殺処分ゼロを公約として掲げ、千代田区を例とするように実際に殺処分ゼロを達成している区がいくつか出てきています。 多くの愛護団体が、「東京オリンピックの開催される2020年までに殺処分ゼロ達成」というスローガンを掲げ、日々必死に活動しています。 まさに今、不幸な動物たちを減らすべく日本全体が動いているのです。 私は、この国が殺処分ゼロを達成するのはそう遠くないと信じています。獣医師となり様々な現実を知った今でも、そう思っています。 一日も早い「その日」の到達のため、これからも行動し続けたいと思っています。 |
そとねこ病院HOME 院長 黒澤 理紗 平成30年1月1日掲載 |
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