新潟動物ネットワーク No.151 |
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猫と生きるとは |
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忘れもしない去年のあの日。当時高校3年生の私がいつものように学校から帰ると、母から愛猫の死を告げられた。享年8才、まだ若い。心臓発作によるあまりにも突然の別れだった。 私が10歳の時我が家にやってきたノアは、毎日一緒に過ごす中で私たち家族に数え切れないほどの笑顔をくれた。得意技はおいしいものを見つけること。何か食べている人の横にはまん丸の目をしてちゃっかり座っているし、私が少し目を離したすきに食べ物を盗んで、何も知らない顔をして毛づくろいしていることもあった。夜一緒に寝るときはなぜかノアが布団の3分の2を占領している。かといって私がくっついて寝ようとすると、さらっとどこかへ行ってしまうような本当に調子のいい猫だった。でも、そんなところもかわいくていとおしくて大好きだった。 初めて経験したペットロス。少しでも油断すると涙が出てしまう日々が続いた。いつも彼の体の幅だけ開いていた引き戸は閉まったままだし、学校から帰ってきても家には誰もいない。食べ物をねだる姿も、私のベッドの上で気持ちよさそうに眠る姿もない。彼の死を受け入れることができず、何度も何度も名前を呼びながら家中を探し回った。彼のいない食卓が、家が、大嫌いになった。 彼の死から2か月ほど経った頃、あの日から一切猫の話に触れてこなかった私と母はいつの間にか同じ思いを抱いていた。 「また猫と暮らしたい」 確かに別れは本当に苦しかった。どんなに楽しい思い出も涙なくしては思い出せないほど。もう猫なんか飼うものかと思ったこともあった。でも、素敵な出会いには悲しい別れが付きものなのだ、ノアがたくさんの幸せをくれたように次に来た子もきっとたくさんの幸せと笑顔をくれるだろう、そう思って新しい子を迎えることを決めた。母と相談して新しい子は地元の動物保護団体から引き取ることにした。この決断が、このあと私がNDNの活動に参加する大きなきっかけとなる。 そしてうちにやってきたのはキジ白の子猫、名前はとんぼ。ノアが天国にいったあの日はよく晴れた日で、赤トンボがたくさん飛んでいたのがすごく印象的だったのだ。誰にも言っていないが、これが我が家の2代目愛猫の名前の由来である。この名前の中には今でもノアが生きている。そんなとんぼは現在8か月。元気いっぱいでかなり破天荒な彼は、私たちに手を焼かせながらも本当に毎日笑顔をくれている。チャームポイントは、幸せを引っ掛けてくると言われているカギしっぽ。こじつけかもしれないが、彼が来てからいいことばかり起こっている気がする。第一志望の大学に合格し、新しい友達にも恵まれ、本当に毎日が楽しいのだ。 ノアとさよならしたあの日から、とんぼの年齢と同じく8か月が経った。泣いてばかりで気分は沈み、家が大嫌いになったあの時期。友達にもノアの死を言い出せず、ペットの話すらしたくなかった。今ではだいぶ立ち直ったものの、やはりひとりでノアのことを思い出すと涙が止まらない。本稿を書いている間も涙が溢れてくるほどだ。でも、今回こうやって自らの体験を書き出して自分の思いを整理する機会をいただいたということは、天国のノアがもう泣くのはやめてと言っているのではないかという気がする。あの子は本当に優しい子だったから。 私が今日、毎日楽しく過ごせているのは、小さいころから私に元気を与え続けてくれたノアの存在と、どうしようもないほどの大きな心の穴を、今ゆっくりゆっくり塞いでくれているとんぼの存在、そしてそんなとんぼと出会わせてくれた保護団体の存在があったからだ。そんな保護団体に微力ながらも恩返ししていけたら、と思って大学進学をきっかけにNDNに飛び込んだ。今、私は自分の周りにいる猫たちを自分の手で幸せにしていけたらいいなと思っている。県は違えどやっていることは同じ。だから、新潟での私たちの活動が県を越えてとんぼを引き取った保護団体まで何らかの形で届くことを願うばかりだ。 最後になるが、動物と暮らすことには別れが不可欠だ。でも、一緒に過ごす時間は本当にかけがえのないもので、私たちの人生に輝きが増すことは間違いないだろう。そして、できることなら、とんぼと同じように行き場を失った猫たちをどうか引き取ってほしい。私たちが幸せになるきっかけを、不幸になりかけた猫たちからもらってほしいと思う。これからのNDNの活動の中で、動物と暮らす幸せと動物の幸せについてより多くの人に伝えていけるように尽力していきたい。 今、この原稿を書いている私の横でとんぼがすやすや眠っている。やっぱり猫との暮らしは最高だ。 |
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キャットタワーの1番上がお気に入りだったノア |
数少ないツーショット |
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我が家に来たばかりのとんぼ |
手足がとっても細い! |
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新潟動物ネットワーク/猫班(資料送付)・イベント班 今 凪沙 平成28年8月1日掲載 |
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