印鑑やネックレス。
象牙でなければダメですか? |
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大人なら誰しも、未来の子供達の為に、美しい自然を残したいと願っているはずです。ですが、自然環境そのものと言える野生動物が、今、その姿を消そうとしています。20世紀頭に1000万頭生息したアフリカゾウは、象牙を求める人間の手によって残り3%となりました。なぜ、象牙取引がなくならないのか。貧困に苦しむアフリカの多くの国にとって、象牙の密猟は大きな収入源となります。そして、象牙を消費するのは我々日本人です。サバンナゾウはあと10年で絶滅するだろうと予想する研究者もいます。ゾウの牙は鹿やトナカイの角とは違い、生え替わる事はありません。ゾウを殺さなければ牙は得られないのです…。
NPOアフリカゾウの涙は、10年後もアフリカ象のいる世界を守りたいとの想いで、2012年に日本人女性が立ち上げた会です。現地ケニアの保護活動の他、日本の子供達に向けて絵本の読み聞かせやワークショップを通じた野生動物と環境に関する教育を行っており、2月4日(火)新潟県では初めて、新潟市立桜ヶ丘小学校にこのプログラムがやってきました。
(NDNはアフリカゾウの涙と桜ヶ丘小学校の橋渡しを務めました)
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授業は「牙なしゾウのレマ」の読み聞かせから始まります。この絵本は密猟で家族を失ったアフリカゾウのレマが広大なサバンナでたくましく生きる姿を描いた物語です。教室のスクリーンには絵本の挿絵が映し出され、サバンナを思わせる神秘的なBGMが流れます。アニメ忍たま乱太郎やアンパンマンで声優を務める、四宮豪さん、〆野潤子さんが、主人公のレマの声はもちろん、動物達を何役もこなし、効果音やナレーションも務めました。目を閉じていると、大勢の声優さんたちが、目の前にいるような感覚です。
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おじいちゃんサイがレマに語りかける場面では、リアルなおじいちゃんボイスに子供達は大興奮!そして、レマが家族を失うその時は、とても静かにスクリーンを見つめていました…。子供達はレマと一緒に走り、涙し、立ち上がり! 絵本のページが開かれるたびに、心の中で動物達を動かし、サバンナを想像していたようでした。
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プロジェクトの後半は、NPOアフリカゾウの涙の創設者、山脇愛里さんのアフリカトークです。アフリカには54の国があり、砂漠もあれば、ビーチもある。キリマンジャロの頂上はマイナス26度!
ゴリラは人間が10年お風呂に入ってないような匂いがするよ! 写真と共に紹介されるアフリカ情報はどれも興味が尽きず。サバンナでの動物たちの様子を丁寧に教えてもらいました。
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木を倒し、土を掘り起こし、獣道をつくり、植物の種が含まれた糞をする象は、サバンナの植木屋さんと呼ばれています。サバンナの動物にはそれぞれ役割があり、命の循環が続く事を教わりました。山脇さんは授業の中で、象牙を好む日本や中国の文化や嗜好が、密猟を加速させている事には、さほど触れませんでした。優しい言葉を使えば、子供達も十分理解できたと思います。それよりも、ネイティブな英語を交えた軽快なやりとりで、子供達の興味を引き出し、沢山の質問に答え、ダイナミックなアフリカの魅力、自然の素晴らしさを感じさせてくれました。
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今、サバンナでは、ケニア中から選ばれた技術者たちが象を守るレンジャーとして活躍しています。印鑑やネックレスが象牙である必要があるか考えてみること。調べてみること。小学生も大人も、ここ日本でアフリカゾウを守るレンジャーになる事ができます。
後日、桜ヶ丘小学校の子供達から届いた感想には「象牙を欲しがらない大人になりたいです」とありました。私たちの選択が動物達の命を守ります。10年後もアフリカゾウのいる世界であるように。大人も正しい知識を身につけ、行動し、発信して行きましょう。
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牙なしゾウのレマ
滝田明日香/文 小林絵里子/絵(NHK出版) |
牙~アフリカゾウの密猟組織を追って~
三浦英之/著(小学館) |
◆NPO アフリカゾウの涙 http://www.taelephants.org
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新潟動物ネットワーク/学校啓発班
大杉 りさ
令和2年4月1日掲載 |