新潟動物ネットワーク  
No.193



のびのびとした平飼い養鶏と自然栽培米
           ~宮尾農園 見学会~


令和1年12月29日、新潟市北区にある宮尾農園さんを訪問させていただきました。宮尾さんは、現在の日本では95%以上の養鶏場がバタリーケージ*を使用している中、AW(アニマルウエルフェア)を実践され、できるだけ環境に負荷をかけない持続可能な農業を目指し、平飼い卵の養鶏と無農薬・無肥料の自然栽培米を生産されています。  

●12月とは思えないポカポカ陽気 鶏舎まで案内していただく




●鶏舎の中を覗きながら詳しく説明してくださいました






【にわとり】

鶏舎はのどかな田んぼの中に2棟建ち全部で9部屋ありました。主力の鶏たちは4部屋にそれぞれ90羽。残りの5部屋で育成中の大雛や老鶏など、全体で700羽程飼育されていました。どの部屋も清潔で広々とした心地良い空間で鶏たちは足で土を掻き、嘴(くちばし)でつつき、砂浴びし、止まり木で休み、産卵箱で卵を産みと自由気ままに活動していましたが、驚いた事に養鶏場特有の臭いが全くありません。藁や落ち葉でできた土には多様な微生物(菌)が棲み、それを鶏がついばむことでバランスの良い腸内環境を作り、また活発に動き回ることにより内臓が長くなり消化を助け栄養分をしっかり吸収しているので、糞の匂いはほとんど無いそうです。



●広々した鶏舎の中で思い思いに行動しています 向かって右側に産卵箱があります




●勢いよく砂浴びしています




●止まり木で安心して休む鶏




●美味しそうに餌をついばんでいます




●水飲み場




鶏舎の中へ入る時、靴底を消毒液で洗うよう指示がありました。これは防疫指針として外からの微生物は持ち込まないようにと指導され、また周りに迷惑をかけないよう見学者には実践させているそうですが、ご自身は自然の中にあるウイルスや細菌微生物を遮断するのではなく、むしろ取り込むことで鶏の持つ免疫力を強くし自ら病原菌に負けないようにしたいとのお考えでした。


●鶏舎の中へ入る前に消毒します




自然の山は100年で有機物層が1cm積もると言われ、鶏舎の土づくりにも長年の積み重ねがありました。鶏はヒヨコから飼い始め2年半で交代となり、その時期に合わせて土を半分取り除き(半分の種菌を残し)新たに藁を敷きヒヨコを迎える、を繰り返し20年かけて作り上げてこられました。藁は大事な要素の一つ。自然栽培による自家製の藁には納豆菌や枯草菌が棲み最適とのことでした。


●自家製の自然栽培の藁です




餌づくりも自然と健康に配慮し80%自給、地元産の米(飼料米:籾殻と玄米)が6割、ほかに発酵飼料(米糠、酒粕、籾殻)、大豆かす、煮干し粕 果実酵素、野草、海水など地域で手に入る資源をたくさん使い、胡麻や、カキ殻、カニ殻などと自家配合したもので季節や鶏の成長に合わせて与えられています。
餌やりは1日1回、日没前2時間頃に与え、餌やり前に空腹時間が2時間程になるように心がけているそうです。人間もそうですが常に胃の中に食べ物がある状態では体調を崩し、結果糞も悪くなり、餌も食べなくなるそうです。


●こだわりの配合飼料

    


●発酵飼料




鶏は通常120日で初卵ができピークが160日と言われ、一般的には効率重視で高タンパク飼料を与えどんどん太らせますが、こちらではしっかりとした身体づくりをさせるため、生育の途中から内臓を鍛えるような粗飼料(草とか籾殻)を与え130日頃に初卵となるようにと工夫されていました。
雌鶏はオスが居なくても卵を産みますが、雌鶏が安心して暮らすためにこちらの鶏舎では一部屋あたり5羽のオス(メス15羽に対しオス1羽)を混ぜ、オスが様々な面でメスをサポートしてくれるというお話が興味深かったです。

●鶏は日が短くなると卵を産まなくなってくるので貴重な卵です。
「みやたま」お米を食べているためきれいなレモン色の黄身をしていました


  


また、鶏にはお互いにつつき合い羽を痛めてしまう習性があり屠畜する時に羽を毟りにくいため、ほとんどの養鶏場ではくちばしの先をカット(デビーク)していますが、くちばしは人間にとって手と同じでとても大切な部分。その手を切断する事は可哀そうでとてもできないと宮尾さんはやっていません。お互いにつつき合うのも遊んでいるように見えるので心配していないそうです。私自身、子供時代に小屋で鶏を飼っていましたので、つつき合うのも当たり前、まさか生きている鶏の嘴を切断するなど思いもよりませんでした。

●デビークされていないので嘴がちゃんとあります




ただその為、新潟県では宮尾さんの鶏を屠畜してくれる場所がなく現在は遠く山形県の屠畜場まで運んでいるとのことでした。鶏の寿命は10年以上ですがこちらでは2年半でアウトとなり、屠畜される運命の鶏でもせめて生きている間は痛みも不自由もなく快適に過ごさせてやりたいという思いが伝わり、この鶏舎にいる鶏たちはとても幸せだなと思いました。

●鶏舎からの帰途、刈り取りの済んだ田んぼで餌を探す白鳥




●空にはオオヒシクイの群れ




【自然栽培米:無農薬、無肥料(有機肥料も使わない)】

宮尾さんは無農薬・有機肥料栽培米を23年、9年前から自然栽培米(無農薬・無肥料)に少しずつ切り替え、4年前からすべてを自然栽培で行っています。

無農薬なので田んぼに棲む土壌微生物の力が存分に発揮され、無肥料なのでゆっくり成長した一つ一つの細胞壁は強く丈夫な稲になります。まっすぐ上に伸びた稲は倒れず土壌に太陽が当たりしっかりとした根が張ります。風通しも良く蒸れることがないので病気にもなりにくく農薬も使用されません。
また無肥料の場合、農産物に含まれる硝酸態窒素が低く抑えられ、人体(酸素欠乏や肝機能障害など)や作物(酸化)への影響が少なくなります。さらに酸化されにくいので農産物が腐りにくいと言われています。
除草剤を使用していないので雑草は生えますが、撹拌して土に戻すと雑草からの成分と微生物が光合成して栄養分になり(アレロパシー効果)稲自体が丈夫になり、雑草の力が弱まりだんだん生えにくくなるそうです。

自然のままの田んぼにはたくさんの小さな生き物たちが活動し生態系を守り稲の生育を助けています。
それはバランスの良い自然の山は農薬や肥料を与えていなくともいつも青々と脈々と生命をはぐくんでいるのと同じです。


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宮尾さんは常に鶏や稲と対話しより良い生育環境を整えるべく心配りをされていました。ご自分の仕事に信念と誇りを持ち自然の持つ力を信じ地球環境が改善され100年後も豊かな農地であるように、今の自分にできることに取り組みたいと熱く語られました。

宮尾様ご夫妻には年末のお忙しい中、大勢での見学にもかかわらず快く引き受けていただき、また温かいおもてなしをいただき、どうもありがとうございました。

*宮尾農園さんのお米や卵が購入できる場所=ナチュレ片山、おひさま日曜市、パルファンドゥー等
*バタリーケージ=集約型の養鶏システムで鶏1羽あたり平均B5サイズのスペースの金網で囲まれていて止まり木も巣も砂場もない。一般のスーパーで売られているほとんどの卵の生産方法。


●宮尾さんご夫妻




●みんなで




●できたてホヤホヤ 自然栽培の発芽玄米餅がとても美味しかった




新潟動物ネットワーク/総務チーフ・猫班  
菊谷 多鶴子
令和2年2月1日掲載


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