新潟動物ネットワーク  
No.192



大牟田市動物園見学


新年おめでとうございます。

私たち人間と関わる様々な動物たちを考える指標として、「動物福祉」という言葉があります。これは、動物愛護という情緒的なイメージではなく、動物が本来の生態を満たすために何に配慮したら良いかという動物目線に立った考え方です。今年は「動物福祉」がもっと広まる1年になりますようにと思います。

11月22日(金)23日(土)の2日間、動物園動物の福祉を学ぶために、福岡県大牟田市動物園を訪れました。人口11万人ほどの大牟田市にある市営の動物園で、飼育されている動物は50種250匹です。開園から40年以上の古い動物舎に手を加えながら、動物たちの目線に立って様々な工夫をしていることで注目されており、2019年度のエンリッチメント大賞を受賞しています。「環境エンリッチメント」とは、飼育されている動物が心身ともによりよく生活できるための工夫のことです。豪華な施設や広い環境でなければ実現できないのではなく、生態に応じた配慮によって、動物たちの福祉を向上させることができるという考え方です。動物園の役割は、教育、種の保存、研究、娯楽、いくつかあると言われています。大牟田市動物園は珍しい動物を集めることを目的としておらず、最新式の豪華な設備もありませんが、目の前にいる動物たちのエンリッチメントを通して多くのことを伝えようとしていました。動物たちがどうしたら、より幸せに暮らせるか、椎原園長をはじめとしたスタッフの想いから、人間の側ができることは何なのかを考える機会になりました。




「ぞうはいません」
園の入り口で目を引く看板。ぞうは、群社会で生きる動物だとさりげなく教えてくれます。

 


動物福祉のキーワード① 動物たちに選択肢を与えること

いつでも自由にバックヤードに戻れるように寝床へのドアが開放されています。
動物が自分の居たい場所を選ぶことで行動範囲も広がります。
隠れる場所、登る場所、様々な選択肢を与えることでストレスの緩和につながります。








動物福祉のキーワード② 本能を満たす給餌の方法

餌やり体験はありません。本来、動物たちは餌を探すことに多くの時間を費やしているので、それを満たしていくのが大切だそうです。例えば、プラボトルの中に餌を入れてゆっくり時間をかけて餌を探す工夫や、頭上に藁を置き努力して餌を取れるような工夫。隠した餌を探すことで好奇心も刺激されます。








動物福祉のキーワード③ 生態に応じた環境作り

本来、動物たちはコンクリートの上で生活していません。人間の側が管理のし易さから「檻とコンクリート」という環境を作り出したのです。ここでは、昔から使われていたコンクリートの檻に砂や藁を敷いたり、枯れ葉が敷き詰められた木製のトレーを設置したりしています。餌を隠すことで探索する行動も取れるそうです。樹上を好むサルたちには木を渡し、金属製のパイプは消防ホースを巻いています。木登りをするツキノワグマには丸太を組み木して狭い舎内を少しでも自由に過ごせる工夫がなされていました。


 





檻の外に木の枝をさすだけでもサルたちの好奇心を満たし退屈しのぎになります




ヤギは上下の運動ができるアスレチック




動物福祉のキーワード④ ハズバンダリートレーニング

麻酔をかけたり拘束することなく動物たちの健康管理をする工夫のことをハズバンダリートレーニングと言います。餌に意識を向けて苦痛を与えずに採血をしたり、体重計に乗ったり、口を大きく開けてもらったり、ライオンやツキノワグマでも、麻酔をせずに動物たちに協力してもらいながら健康管理をしているそうです。(写真は採血用のパイプをつける様子)



   


動物福祉のキーワード⑤ 高齢動物への配慮

「命」に限りがあることも伝えています。高齢化した動物をバックヤードに追いやることなく、その自然な姿を見せたり、ヤギの高齢化では餌やり体験も終了しています。モルモットやウサギなどの小動物の老モルホームもありました。









思わず頑張って!と声をかけたくなる年老いたヤギさん




動物福祉のキーワード⑥ 遊具の活用

園内のあちこちに様々な遊具やフィーダーが設置されています。自然なものばかりでなく、手作りの一工夫が福祉の向上につながっています。



木枠を消防ホースで編み込んだ巨大ハンモック




パイプを利用したフィーダーは中に餌が隠されています。ゆすったり、穴から手を入れたり、好奇心が満たされ、給餌時間の延長にもつながります。


    


モルモットの広場

名物のモルモットの広場では、モルモットのおうちから橋を渡って1日2回、広場に出勤するのはモル任せです。広場でも随所に逃げ場が作られており抱っこはできません。89頭のモルモット全てに名前が付いていて、飼育員さんに、よく覚えられますねと質問したら、1匹ずつ健康管理をしているのだから名前があるのは当然とのことでした。すごいです。単なるふれあいではなく、一つ一つの命を知ってほしい気持ちがひしひしと伝わりました。







ミックちゃん。かわゆい~~!




モルモットの飼育舎は藁、砂、枯葉など4種類の床材があり自由に選べます




野生下の動物たちの環境や現状を知るコーナーも随所に







お忙しい中、見学から遊具の作り方まで教えていただき本当に感謝です。2日間に渡り大変お世話になりました。

★大牟田市動物園★
https://omutacityzoo.org







新潟動物ネットワーク/代表
岡田 朋子
令和2年1月1日掲載




新潟県動物ネットワーク バックナンバーへ

新潟動物ネットワークさんから、メッセージを戴きました。
   動物のいのちのことを考えてみませんか・・・・
新潟動物ネットワーク 090-2844-4881
  メール  ndn2@ndn2001.com
  http://ndn2001.com
※里親さん大募集しております。※
表 紙 | WEB情報 | サイトマップ | バックナンバー | 検索・リンク 
発行:デジタルショップ村上
新潟県村上市・岩船郡7市町村 月刊デジタル情報誌 2001年1月1日創刊 ムラカミ21ドットコム
(c)2001~murakami21.com All rights reserved
Produce by Takao Yasuzawa