20世紀からの伝言 |
北越後の里山 5 光兎山(こうさぎさん) 文・イラスト 平田 大六 酒造家・登山家
国道7号線を荒川町でわかれ113号を関川村に入りかけると左前方にピラミットのようにそびえているのが霊峰光兎山だ。信仰の山である。861年慈覚大師によって開山された修験者の山といわれている。 山頂には小さな祠があり、山麓の宮ノ前に光兎神社がある。登山道の各ピークには、虚空蔵峰、観音峰、雷大権現などの信迎由来の地名があり、「文化」(1803)と刻まれた石塔もある。戦前まで女人禁制であった。 頂上直下に女性が登って石に化身されたという姥石(うばいし)がある。山名の由来は、頂上につきあげているカラキ沢源頭にあらわれる残雪の形が兎の跳ねている姿に似ているからという。文献には「光鷺(さぎ)山」という文字も見える。毎年7月1日がこの山の祭りだ。 登山道は、地元の中束山の会の人達がていねいに整備されているので立派で迷うことはない。どの登山口から入っても主稜分岐点までは一時間足らずだ。ここから、いくつかのピークを越えながら頂上へのつづくので、966mに150m位は加算しなければならない。 主稜からは右手に女川の深い谷を見る。ことができるし、雷(いかづち)峰に立てば、飯豊連峰が望遠され、眼前には本峰がのしかかっている。一旦鞍部へ降りてここから170mの登りは圧倒的だ。途中、頂上に間ちがわれるダマシ山をすぎりとやがて山頂である。360度の視界。 光兎山は、私の住んでいる関川村の山で、私が登山にめばえていった最初の山である。春夏秋冬を40数年間登ったが1月と3月の記録がない。2月に入ったのも30代の頃なので、深雪をこぎわけて登らなければならない。1月入山はもう私の年では無理なのかもしれない。 独身の頃、前記の姥石伝説のヒントで「山の男と光兎の白い石」というキザな詩をつくったことがあり、私の持物のどこかにしまってあるはずだ。 |
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