吉川真嗣・美貴の二人旅  No.19

  〜江川さんちの馬茶屋を訪ねて〜
            新潟県東蒲原郡上川村
  

  「あまりの外見と中身のギャップに驚いた」の、ナンバーワンがここ、上川村の馬茶屋である。山の中の道路わきにうっかり通り過ごしそうになる、小さな入り口の雑貨屋さん。それが馬茶屋の表玄関である。ツタで作った花器やオブジェがその玄関には並べられ、一歩中に入ると今度は日常雑貨の商品があふれる。驚いたのはここからだ。ご主人に「まあ、お茶でも一杯。」と奥へ奥へと案内され進むと、なんと広くて山の自然と一体化したような緑溢れる中庭に出、更に山間の崖に突き出るように建てられた広々とした部屋、瀧音庵に通された。

 この庵に一歩入った途端、思わず感嘆のため息!大きく開かれた窓からは、目の前に広がる山の緑とその下を流れる川が一望でき、かなり高台にあるため、その山と川の落差が何にも増してその景観を見ごたえのあるものにしている。川のせせらぎの音とその上を通り過ぎる風、そして山の冷やりとした空気が何とも爽やかで、視界を遮るものや景観を崩す要因となるものが何も無いことが一段とこの部屋からの眺めを得がたい貴重なものに感じさせる。
この景観以外、何も無いと言えば何も無い。しかしこの店の奥にまさかこんな所がという意外性も手伝って、思わぬ感動に浸れることは確か。しかも嬉しいことに、この庵は会員制で予約の上、貸切で使えるというのだから、都合のよい個人の別荘のようではないか。

 ところで、この馬茶屋を営なむ江川さん親子はこの庵と雑貨店をつなぐ、広いのびのびとした中庭を利用して、時折音楽祭を開かれたりしている。阿賀北地区一帯の活性化と文化振興のために近隣の何箇所かの土地と連携しておられ、外からアーティストを呼び、非常に内容の充実したものになっているその音楽祭のお話に、感動を覚えながら耳を傾ける。
そのコンサートが行われたりする中庭に出てしばし憩ったが、人為的に手を加えられた庭とは違う、自然のままのおおらかさと素朴さが魅力である。庵にしても、この中庭にしても、周囲の山並みが絶妙の借景になって全体に奥行きと自然のハーモニーをもたらしている。ここで聴く音楽は室内では味わえない周囲の木々との共鳴で、さぞふくよかな遠くにまで届く音色になることであろう。

 初めて訪れた今回は、まさかこんな「隠れ家」のような所に出くわすとは露ほど思わず、思わぬ「穴場」を知ってとっても得をした気分である。そして江川さん親子のお人柄に惹きこまれ、ついついお話で時間が経ってしまったが、次回は是非にこの庵でしばし大の字になって、ひたすら対岸の山からの風と川の流れに聞き入り、庵の庵たる所以を堪能したいものである。
3年間有効で会費が5000円の馬茶屋の「柿の家倶楽部」は、知ると人にも伝えたくなる、のびやかで優しい場。きっと四季折々、様々の顔を見せ、訪ねる人の心境如何でその風景は深くあなたに染み入ることでしょう。
  
写真・文 吉川 真嗣・美貴












自然そのままの中庭を楽しむ筆者




おすすめ食事処
会津名産
 本ぼうだら煮
 にしん山椒漬

 
福島県会津若松市相生町
 Tel 0242-22-2274





瀧音庵のすぐ脇には川が流れる





上菓子司 会津葵

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