リレー随筆「鮭っ子物語」  No.20

「村上を高齢者の理想郷に」


 作家の石川好氏は「(辛いことがあっても)自分を迎え入れてくれる故郷があれば生きていくことができる。故郷がなければ人は生き難いものである。」と述べているが、北朝鮮に拉致され帰国した被害者をみても、故郷は「癒しの場」としてありがたいものである。 
 私には何代にもわたって引き継がれてきた村上の血が流れ、それが故郷に強いこだわりと愛着を持たせ、年を追うごとにこの想いが強くなる。いたるところで、お祭りやサケ料理など村上の良さを自慢する中で、地元を盛り上げようという若い人々の熱意とアイディアで「人形様巡り」や「屏風まつり」、そして「宵の竹灯籠まつり」など、次ぎから次ぎへのイベントで全国に広められていることに私の鼻が一層高くなってきた。
 私にとって、毎年、お祭りの引き手としての参加と幼馴染との毎月の定例会は最優先の日程である。そこでの、互いに知り尽くした、隠しごとがない会話の中で日頃の疲れが癒され、最高の楽しみの場となる。そしてそのことが村上から心を離せない日々となっている。
 しかし、これらの強い想いが逆に、今住む豊栄では気軽に酒酌み交わす友達をつくらず、村上にこだわってきた付けが来はじめ、それと同時に、親しくしていた職場の友も退職年数に比例して遠くなってきたことに気が付いた。
 ならば、いっそのこと村上に帰ろうと決め、妻に相談したところ「今まで一生懸命働いてきたのだから、これからは大好きな村上で過ごすことが一番よ」と背中を押されて、セカンドハウスの物色をはじめた。すると早速、私を育んでくれた小国町に適当な家があると幼馴染が知らせてくれた。話を聞くと不思議なことに、その家の真後ろは父や母の眠る墓がある。先祖の導きと思い、ここなら毎日お参りすることができると早速購入した。
 改修を終えたら、社会福祉士の資格を生かして「福祉相談所」の看板を掛け、在宅福祉の支援として血縁を超えた地域介護ができる場になればと思っている。
 老後の過ごし方は難しい。人それぞれに生き方はあるが、私の周辺を見ても定年後、好きなことに没頭しながら悠々「三昧」の生活をしている人は少なく、むしろ「女は三界に家なし」が「男は」に変わった厳しい現実がある。
 これが、高度成長期を懸命に働き支えた男の老後の姿であっては寂しい。
 私のように故郷にこだわりを持っている人も多くいるであろう。その受け皿と活用の場があるならば、時には故郷に帰り、これまで培った専門分野や趣味の世界でも豊富な経験と豊かな知識、そして外から見る目を通して、若い人達のアイディアを引き出すことのできる人材は多くいるはずである。その活用で地域の活性化にもつながり、自身の精神的充実も得られるであろう。

サケの子が再び生れ故郷に帰って、新しい生命と恵みをもたらすように、市政の中でもこの受け皿と活用を真剣に考えて市勢発展に繋げ、村上を高齢者の理想郷にして欲しいと願う今日この頃である。




リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)









山田 善弘

(やまだ よしひろ)

村上小学校卒業(昭和25年3月)




村上大祭で旧交を温める(左側が筆者)














高齢者介護教室での受講





























次回予告
松田純司(まつだ じゅんじ)
昭和28年3月
村上小学校卒業


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