吉川真嗣・美貴の二人旅 No.18
〜むらかみ 宵の竹灯灯籠まつりを終えて〜
3000本の竹灯りが、日没後町の一画に忽然と姿を現す、というのをあなたは想像できるだろうか。先月10月12・13日の土日の2日間、村上市内の小町界隈は夕方から、初めて目にする竹のイルミネーションを今か今かとそわそわ浮き立ち待つ見物客で賑わい始めた。「竹灯籠まつり」とタイトルだけでは具体的なものがイメージできない中で、また何か村上で「騒ぎ事」がはじまるっせ、という期待感が少なからず高まっていたことは確かであろう。3000本と聞いても果たしてどのくらいの分量なのかも、どれくらいの距離の範囲で行われるのかも、皆目検討がつかない。そんな中、大勢のスタッフ、見物客、そして後述の演奏者たちで、人の往来が賑やかになってきた。
この「竹灯籠まつり」は竹の灯りを回遊しながら楽しむだけではない。その竹灯りの中で雅楽・尺八・琴・三味線・ピアノ等の演奏を楽しんでもらうおまつりだというのだから、何と粋ではないか。全国的に他の市町村を見回してみれば、この竹灯りだけをやっている所は他にも結構ある。しかしこの灯りプラス音色というのは村上のオリジナルである。さすが我が村上と誇りたいところである。発想のすばらしさに加え、何とこの各楽器の演奏者の大半が地元村上の人で構成されているということからである。聞くだけで元気が湧く、かの津軽三味線でさえ、地元の人々による演奏なのだから。
夕方6時を境にいつもの見慣れた一画が見事にお化粧されて、おびただしい数の竹の灯りが浮かび出した。この界隈の昼の顔と夜の顔の変化に驚きながらも、夜のなせる技であろう。すべては闇夜に掻き消され、竹灯りだけが小路に沿って連なり、お寺の境内や料亭の中庭には灯りがそこここに点在し、とにかく美しい。ろうそくの灯りなのでオレンジ色で温かみがあり、しばらくひたすらに心静かにじっとながめている人の姿が多いのが印象的であった。人は本当に美しいものを見る時というのは言葉が要らないものだとしみじみ感じる。
6時半頃からは、浄念寺(重要文化財)、安善寺、料亭の新多久(登録有形文化財)、浪漫亭(登録有形文化財)の4箇所で演奏会が始まった。その周辺を回遊・散策していると、そこここから何とも雅な音色がもれてくる。「幽玄の光といにしえの音色のまつり」とサブタイトルにうたわれているとうりである。この4箇所、それぞれの魅力ではあったが、私はお寺の夜のライトアップされた姿にいたく感動した次第である。お灯明が何箇所にもあげられ、少し離れて見ると暗闇の中に浮かび上がる阿弥陀如来さま。まさに闇の中の光であり、いつにも増して神々しく大きく見えたことである。この2日間は阿弥陀さまも仏様方も、村上が賑わい美しく彩られ、さぞお喜びであったろう。
そして演奏の方は?というと、これは皆様いらしてのお楽しみ。あなたの期待を裏切ることはないことだけを保証して、是非来年の10月第2土曜日と日曜日の2日間、村上にお越し下さい。今年よりはまた少し竹灯りの小路の距離も伸びていることでしょう。
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浄念寺の阿弥陀如来
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おすすめ食事処
会津名産
本ぼうだら煮
にしん山椒漬
福島県会津若松市相生町
Tel 0242-22-2274 |
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浄念寺(国指定重要文化財) |
津軽三味線 |
潮太鼓
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浪漫亭 |
上菓子司 会津葵 |
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