リレー随筆「鮭っ子物語」  No.18

 「村上、そして関川村」



 私の母は村上市の出身である。そんな事から私は小さい頃からよく実家に連れていってもらっていた。

 毎年の夏休みには「七夕祭り」の獅子舞を見、すぐ近くの食堂のラーメンを食べ、映画の全盛期、市内には映画館が3っあり、鞍馬天狗やターザンのシリーズものを観せてもらった。我がふるさと、関谷村(当時)から見れば村上は私にとって大都会であった。
その母が今も「村上」にこだわるのが正月料理としての“塩引き鮭”と“飯(いい)ずし”であり、母から家内へ直伝のこの「村上の味」を毎年楽しみにしているところである。

 ところで、私はこの3月まで地方公務員(土木技術屋)として新潟県の社会資本整備、とりわけ治水対策を一貫して担当させてもらってきた。
 転勤場所の一つである地元「村上土木事務所」にお世話になったのは平成5年度のわずか一年間であったが、私は幸運にめぐまれた。
 そこが、この平成5年6月に皇太子殿下と小和田雅子様が御結婚されたのだが、これを受けて建設省(現・国土交通省)は御成婚記念事業として、全国の9河川を“歴史と文化の水辺整備”を実施する河川として選定したのである。
 その中に三面川が含まれ、私は1年間、この計画を担当させてもらえる事になったのである。
当時、三面川では「ふるさとの川モデル事業」により、舟運の歴史を有し、又、世界初の鮭の自然ふ化を成功させた歴史ある河川であることを基本として河川整備が進められていたことが選定理由であったのだが、更には、妃となられた小和田雅子様の本籍が村上市であったことも大きく影響していたと私は思っている。

 そんな事で、すぐ「三面川歴史文化の水辺検討委員会」を設置、私も委員の一人として参画、
 @ 自然にやさしく、魚ののぼりやすい川
 A 鮭から自然と歴史・文化を学ぶ川
をコンセプトにして各種の施設を計画した。
そして、その後、それらの順次実施され、現在に至っているものである。
その一つが「観察護岸」である。
これは鮭の博物館である“イヨボヤ会館”から「種川」まで地下水路(L=110m)でつなぎ、その種川を真横から眺める窓(2mX1m)を10ヶ所設けた「観察護岸施設」である。
 これにより三面川に生息している魚類、特に秋、遡上してくる本物の鮭を間近に観れるというので観光客に喜ばれていると聞いている。

 しかし、この施設は、鮭の遡上期間が3ヶ月程度で、あと残りの期間の対策が不充分であること、水の濁りに対する改善が更に必要であるとの御指摘を受けているとも聞いている。
ぜひ、今後関係者に御検討願いたいところである。

 さて、私の住んでいる関川村では、昭和42年の8月28日の「羽越水害」により壊滅的な被害を受け(我が家も床上1m)たが、その後の関係機関や地域の人達の大変な努力により今では見事に復興しているところである。
 そして二度と水害のないようにと村に古くから伝わる大蛇伝説にちなみ企画された“大したもん蛇祭り”も今年で15回を数え、ますます盛況になっている。
 又、えちごせきかわ温泉郷として今年の夏もアユ釣りでにぎわった清流“荒川”に沿った5っの温泉(高瀬・湯沢・雲母・鷹ノ巣・桂の関ゆうむ)があり、更に我が集落には雲母温泉を源泉とする「上関共同浴場」(素朴で、熱くサラッとした湯が特徴・・・NHKの「お江戸でござる」に出演中の杉浦日向子さんも入浴し、著書の中でも紹介している)があり、自然豊かな村である。

 昨今、高速道路に対する議論が盛んである。
村上市と岩船郡の発展の基盤となる、地域の人々が期待している「日本海東北自動車道」の中条から北への延伸、更には地域高規格道路の荒川町から山形への「新潟山形南部連絡道路」の整備の行方が今後どうなるのか、大変気になるこの頃である。


リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)



米野 紀男

(よねの のりお)

関川村立関小学校卒業
(昭和31年3月)
元・新潟県庁勤務
現・本間組勤務




鳥海山鉾立口にて(右が筆者)




イヨボヤ会館(村上市)




観察護岸



















大したもん蛇祭り(関川村)




関川村の風景(絵・筆者)





次回予告
林 節子(はやしせつこ)
昭和24年3月
朝日村立塩野町小学校卒業


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