吉川真嗣・美貴の二人旅  No.15

     竹 富 島

               沖縄県竹富島


 7月に入ると本格的な夏の到来で、海をどう楽しむかに心ウキウキし出す私である。
山であれ川であれ地球を身体中で感じるのに、夏ほど大自然の懐に飛び込んで満喫できる季節はないだろう。今月は常夏に近く、今も昔もそのままに、人と自然が溶け合って暮らす島、竹富島のご紹介をしよう。新潟から発信するには小さな旅ならぬ、大きな旅ではあるが・・・。

  さて、竹富島の位置確認からであるが、石垣島から船で10分ほどの距離の島である。うわさには聞いていたが島に入った途端、珊瑚礁の背の低い石垣が島中にめぐらされ、その奥には沖縄の伝統的な赤瓦屋根の寄せ棟づくりの平屋の家屋、咲き乱れるブーゲンビリアをはじめとする様々の花々に彩られ、夢のような空間が目の前に現れる。そのお花の間を舞う蝶、昼寝をする猫、ウコッケイだか何だか珍しい種の鶏、そして水牛が人と等分の存在感をもって、そこここに遊んでいる。驚いたのは人口300人強で、人のみならず、犬・猫・にわとり・ヤギ、果ては自転車・バイクの数までリアルタイムで確認できているということであった。島民の人の「あの子(にわとりを指して)は、飼われているのではなく、野生の鶏で大抵はあの草むらの中が寝床なんですよ。」という言葉に、一つ一つのいのちが大切にされている、どれほど優しい響きを感じられたことであろう。
  島なので勿論周囲はコバルトブルーの輝くような美しい海に囲まれ、浜辺には貴重で珍しい原始の海岸林が続く。浅瀬でも色鮮やかな熱帯魚が発見でき、美しいものの宝庫とも言える竹富だが、私が2日半滞在して一番深く島の残像とも言える形で印象に残ったのは、島のあちこちにある「御嶽(おみ)」(島民の信仰の大切な場)に代表される、目に見えない神性とでも言うべきものと、島民の皆さんの穏やかで優しかったことである。この竹富には多くの神々がおわし、一つの完結した世界を成している、そんな風に感じられた。物に溢れる現代人には、物でないものが満ち満ちている豊穣な所であり、人生観に影響する時間と空間がどこまでも広がっている所である。

  「竹富には琉球のすべてがある。」と那覇で聞かされてきたが、1年の最大のお祭り「種子取り祭」はじめ(かつては琉球の島々どこでも行われていた祭りが、今や残って続いているのは竹富だけという)、赤瓦屋根の伝統的建築は勿論、非常に奥深い内地では無い独特の文化に根差す島である。
  ここを訪れる幸せな機会が巡って来た人には、是非に最低2泊はされることをお勧めする。大半の観光客が2〜3時間で島を一巡しただけで、石垣島や西表島へと移動するとのことだが、私に言わせればこれほど勿体無いことはないのである。滞在時間が経過するに従って、言葉を超えた「なにものか」を感じられる所であるからだ。水牛車に乗られるもよし、サイクリングされるもよし、珊瑚礁の海でひたすらのんびりするもよし、とにかく竹富を身体中で感じてみることである。
  さて、最後にもう一つ。竹富はミンサー織りという織物の発祥の地であり、この織りがまたすばらしい。島の中の民藝館に展示即売されているものをご覧になることをお勧めする。ミンサーの模様に秘められている、女性から男性への愛のメッセージの暗号や、この島に伝わる女神(おなりがみ)信仰(女性には男性を守る霊力がある)の話を聞くに至って、ますますこのミンサー織が奥行き深く、様々な思いに彩られた歴史を持つものとして見えたことである。

   竹富島、日本の中の異国。そして「共生」などという言葉が今更ながらに新しい概念であるかのごとく幅をきかせる現代にあって、ここでは昔も今もそのままに、当たり前の日常としてすべてが生かし合っている所。一度でも訪ねられる人はしあわせ、そして訪ねられない人も、日本のどこかにこんな所が存在すると知って、それだけでしあわせな所である。


  
文・写真
   吉川 真嗣・美貴

   


2人仲良く2人旅



おすすめ食事処
会津名産
 本ぼうだら煮
 にしん山椒漬

 
福島県会津若松市相生町
 Tel 0242-22-2274




赤瓦屋根の伝統的建造物群の町並み



水牛とあの子(鶏)




異国を満喫中の筆者



上菓子司 会津葵


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