3.旧町人町における建造物の実態
住宅地図から抽出した敷地割1905に対し、確認できた建造物1729戸を調査した。 (調査日2001年9月〜12月) (1)歴史的建造物の残存状況 ・・・歴史的建造物の判別は外壁材料や軒の木材等傍観できる範囲で行った。結果、歴史的建造物468戸を確認し、残存率は27.1%であった。残存率が一番高いのは大工町、残存数が一番多いのは庄内町である。(図2)また中央商店街の大町、小町も他と比べて残存率が高い。拡幅した長井町、片町、上片町に歴史的建造物はほとんど残っていない。 (2)歴史的建造物の特徴・・・構造は99.8%が木造であり、RCは1戸だけ確認した。また2階建て、切妻、平入りが多く、この3つの特徴を持つ歴史的建造物は81.0%を占める。用途については、45.7%が住宅、商店は22.9%確認した。空家は13.9%あった。格子は7.1%しかなくほとんど残っていない。(図3)。 (3)セットバックの状況・・・駐車スペースをとるために通りから1.5m以上下がった建造物はセットバックとした。旧町人町全体でセットバックしてしまった建造物が28.1%あった。塩町が一番セットバックしている割合が高い。また道路拡幅した長井町、片町も割合が高い。一方、中央商店街の大町、小町はセットバックしている建造物が少なかった。 4.中央商店街における歴史的建造物のファサードの形態 中央商店街の通りに面した歴史的建造物(54戸)を対象として調査した。 (図4 調査日2001年12月) (1)出入り口・・・アルミ製サッシ戸が70.4%、シャッターは16.7%が使用されていた。 (2)シャッター・・・55.6%がシャッターを使用している。 (3)正面の窓のサッシ・・・1階正面窓はアルミ製サッシが40.7%、格子が5.6%あった。2階正面窓はアルミ製サッシが54.7%、木製サッシが24.5%、格子は7.5%とあった。1階正面窓と比べると木製サッシが多く使用されている。 5.まとめ (1)歴史的建造物は27.1%現存しており、その特徴は木造2階建て、切妻平入りが圧倒的に多いとわかった。また旧町人町の核である中央商店街は、歴史的建造物の残存率が高く、まちづくりをしていく上で重要な地区であることがわかった。すでに中心部の周囲には道路が整備されているので、道路の拡幅をやめ歴史的建造物を活かしたまちづくりを行うべきと考える。 (2)セットバックしている建造物は、駐車スペース確保のために増加の傾向があり,今後町並みを整えていく上で対策を考えていく必要がある。 (3)中央商店街における歴史的建造物のファサードの形態は、アルミサッシやシャッターなど歴史的景観を阻害する要素が多く見られたが、格子も現存しており、これから村上の伝統的な格子や景観に調和したサッシを用いることで景観を改善していくことは可能である考えられる。 【註釈】 (1) 町家の中にお雛様などを飾り、見物客は中に入って、町家の作りと雛人形の両方が見ることができる催し物。屏風まつりも同様の手法。 (2) 作図にあたって元図は村上市地図(調整兜x士波出版)を使用。旧町人町・旧武家町範囲については 内藤候治城明治維新城下時代村上地図(村上市)、村上町全図(郷土村上1981第42号)、景観形成地区については歴史的景観保全ガイドライン(村上市)をそれぞれ参考にした。
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