ヴィレム.ブロンズ　ピアノリサイタルinむらかみ

〜オランダが生んだ音の詩人〜

　ブロンズと日本とのつながりは思いのほか長く、そのきっかけは２０年前にさかのぼる。

　オランダの都市アルンヘムArnhemに生まれたブロンズは、アムステルダムで、カレル・ヒルサムにピアノを、ピート・ケイにオルガンを師事。ピアニストとして活躍し注目を浴びるさなか、ジュネーブ音楽院の名教授、ルイ・ヒルトブランと出逢う。かのディヌ・リパッティの友人でもあったこのヒルトブランとの運命的な邂逅が、ブロンズを日本へと導く要因となった。初来日演奏会が行われたのは１９８２年、以来ブロンズの紡ぎ出す音楽は、音の内側に潜む世界に魅せられた多くの人々の魂をとらえて離さない。

　スイスのヒルトブランの元に渡ったブロンズは、１９６８年、ジュネーブ音楽院演奏家クラスを満場一致の一等特賞を得て卒業、同時にパデルフスキー記念フィリピネッティ賞を受賞。その後、ハイティング指揮コンセルトヘボウ官弦楽団、ロッテルダム・フィル、ロンドン・フィル、スイス・ロマンド管弦楽団との共演。ソロリサイタル、室内楽の演奏会など、常にエネルギッシュな演奏活動を行う。そのレパートリーはバロックからロマン派にかけて幅広く、作品の真の姿を追い求めることにおいて妥協はみられない。

　２０００年５月には、アムステルダムコンセルトヘボウにて、バッハ平均律第１巻の全曲演奏会で大成功をおさめる。また、１８世紀〜１９世紀に使用されていた、あるいはそれらをモデルに復元された楽器「ピアノ・フォルテ」にも強い関心を持ち、演奏する機会も増えている。ヒストリカルの名手ジョス・ファン・インマーゼルがアントワープで主催している“アントワープピアノ”音楽祭にも招かれている。また、”オイゼビウス・クリング”を主催し、自ら常に精力的な活動を行うその音楽への探求心と熱意は留まることを知らない。ヨーロッパ、日本でアルバムを発売。日本では、１９９７年、日本クラウンよりシューベルトのアルバムがリリースされている。

　教育者としての力も特筆すべきものがある。アムステルダム音楽院で長年にわたり教鞭を取るかたわら、オランダピアノ教育連盟の会長も務める。１９９５年より毎夏アムステルダムでマスタークラスを開催、２００１年２月にはモスクワ市内の音楽院2校でも招かれ、国外での教授活動もますます好評で、意欲的な取り組みを見せている。日本には初来日以来、東京芸術大学、桐朋学園、国立、洗足学園、新潟大学等各地の音大に招かれ日本でのファンも多い。２００１年５月には教育連盟をはじめ、仙台国際コンクールの審査のため来日。２００２年３月、教育連盟で招聘され名誉会員となる。２００３年４月２９日にオランダ女王様より「Offieier in de orde van ORANJE NASSAL」勲章を音楽家・演奏家として授与された。２００３年１１月７日東京にてリサイタル開催予定。

　ヨーロッパの伝統にのっとた現代の第一級のピアニストであり、また彼の真摯なあたたかな人柄は人々を惹き付ける魅力である。

　この素晴らしい芸術家をこの度、東京公演後に、同じプログラムで村上で行うことになった。ブロンズの弟子達がきっかけになり、町の人達によるボランティアで開催されるこの度の村上公演では、できるだけ多くの人にこの素晴らしい芸術家に触れて頂こうと格安の値段でまた、演奏ではブロンズ本人の解説付きで通訳を通して皆さんにわかりやすく、とのあたたかいブロンズの人柄も感じられるリサイタルを計画している。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　文責：ブロンズinむらかみ　井口薫