2012年5月号 | ||||||||||
リレー随筆 「鮭っ子物語」 No.131 |
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キツネと少年 |
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昔々の話 今から六十八年前の話である。 その頃は、現在と違い、電気も、大きな茶の間一個の裸電球。 人の顔がやっと見える位、そのような時代の話である。 あちらこちらでキツネにだまされたと云う話が多かった。本当のような、うそのような、おもしろい話である。現在文明の世の中に、心身共に笑える話だと思います。ちょっと読んでみて下さい。(キツネと少年) 一人の少年が居ました。ああ、たいくつだなあ、家を出て外へ遊びに出かけました。 当時は、どこの家でも農作業に使う牛や馬を飼って居ました。牛に、わらじをはかせて荷車を引かせるのが普通でした。きれたわらじは、そのまま捨てて行く、のんきな世の中でした。さて少年が家を出て間のなく、キツネと遭遇しました。 「あっキツネだ」少年は小声でさけんだ。「ようし、少しあとをつけてみよう」。 するとキツネは、捨ててあったわらじをひょいと拾い、肩にかけたと思うと、あーよしよし、と、ねんねこを着た子守になった。 少年は「こいつ、人間に成りやがって」とつぶやき、あとをつけた。 すると、しばらく行くと家があった。キツネはその家に入って行った。 少年はそうっと家の中をのぞいた。中には何人かの人が居た。 すると、キツネが子供をあやしはじめた。少年は思わず声を出した。 「おーい!それは人間じゃない、キツネだぞ」とさけんだ。 すると中から大人が出て来た。大人はどなった。 「誰だ、人の家をのぞいているのは」。 少年はとうとうつかまってしましました。暗い牢屋に入れられて、一生懸命にあやまりました。もう、よそに家をのぞいたりしませんから、かんべんして下さい。 いくらあやまっても誰も来てくれません。少年は何度も何度もくりかえしさけんでいました。やがて日が昇り、村人達が仕事に出はじめ、村のはずれに来ると、なにやら大きな大きな声で「もう悪い事はしません。かんべんして下さい」と怒鳴っている。よく見ると少年がサルカケいばらと云うツルに首を入れて泣き喚いていました。 村人達は、少年がキツネにだまされたと笑われていました。 キツネと少年と云う話です。このような話があちらこちらで聞かれました。今では考えられない事ですが、当時は何もない、夜長をすごしたものでした。 皆様も経験がおありの事でしょう。 一時昔に返ってみてはいかがでしょうか。 |
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