2010年12月号 | ||||||||||
リレー随筆 「鮭っ子物語」 No.114 |
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二つの故郷 |
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私は村上で生れ、山北で育ちました。 小学校に上がるまでは、ほとんど村上の母の実家に居りびたり、4、5人の仲間と寺町、小町、大町、安良町のあたりを一日中遊びまわっていました。あの頃の私は首の後ろを刈り上げたおかっぱ頭で、「サザエさん」に出てくるわかめちゃんそっくりで、おまけにおしゃべり、おてんばだったものですから、近所の人に「台風娘」とあだ名をつけられていました。夜は祖母と銭湯に行き、でっかい扇風機の下でコーヒー牛乳を飲んだり、アイスクリームを食べたりして、一日がとても楽しく過ぎていきました。それからふとんに入り、枕に耳をつけて寝ていると「ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン」と三面川の鉄橋を渡る夜汽車の音が聞こえてくるのです。そうするとさすがの台風娘も母が恋しくなり、うちに帰りたくて、祖母に気づかれないように、シクシク泣いていました。 私の育った山北の家は、目の前が海で、友達と遊ぶのも宿題をやるのも砂浜でした。 小さい頃から本当に海が好きでした。 私の中にはいつも二つの故郷があります。肉屋も貸本屋もなんでもある村上の町と、そんなものは何もなかったけど、潮の香と、磯くさい魚の網のにおいと、冬のごうごうとうなる波の音、そして粟島に沈む美しい夕日の見れる山北の町です。 今までずっと仕事をしてきて、自分がなにか熱中してやれるもの、趣味といえるものがないことに気づき、焦りのようなものを感じていました。自分の心を落ち着かせてくれるもの、そしてそれを一人でやるのではなく、グループの中に入ってやりたい、という思いが強くありました。そんな時一枚のチラシが目に留ったのです。「70年代フォークをギターで弾こう」という3ヵ月講座を受講し最後に終了コンサートをやる、というものでした。「これだ」と思い迷わず受講しました。20代の頃弾くのを辞めて、押し入れの中に入ったままになっていたギターと、ここに来て30年ぶりに再会となりました。 終了コンサートで、湘南のフォークデュオ ブレット&バターと共演できたことも、ラッキーなことでした。 あの時受講した有志でギターアンサンブルのグループをつくり、年一回のコンサートに向けて練習しています。 目をとじれば二つの故郷が見えてくる。 そして今自分にはギターがある。 ずっと続けていけたら・・・と思う。 |
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