http://www.murakami21.com 村上広域情報誌2001
2010年12月号
  リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.114


二つの故郷




向井 順子
(むかい じゅんこ)
南中学校卒業(山北) 村高 54年卒
元旅行代理店勤務






ギタークラブコンサート








粟島に沈む山北地区の夕日
 私は村上で生れ、山北で育ちました。
小学校に上がるまでは、ほとんど村上の母の実家に居りびたり、4、5人の仲間と寺町、小町、大町、安良町のあたりを一日中遊びまわっていました。あの頃の私は首の後ろを刈り上げたおかっぱ頭で、「サザエさん」に出てくるわかめちゃんそっくりで、おまけにおしゃべり、おてんばだったものですから、近所の人に「台風娘」とあだ名をつけられていました。夜は祖母と銭湯に行き、でっかい扇風機の下でコーヒー牛乳を飲んだり、アイスクリームを食べたりして、一日がとても楽しく過ぎていきました。それからふとんに入り、枕に耳をつけて寝ていると「ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン」と三面川の鉄橋を渡る夜汽車の音が聞こえてくるのです。そうするとさすがの台風娘も母が恋しくなり、うちに帰りたくて、祖母に気づかれないように、シクシク泣いていました。
 私の育った山北の家は、目の前が海で、友達と遊ぶのも宿題をやるのも砂浜でした。
小さい頃から本当に海が好きでした。
 私の中にはいつも二つの故郷があります。肉屋も貸本屋もなんでもある村上の町と、そんなものは何もなかったけど、潮の香と、磯くさい魚の網のにおいと、冬のごうごうとうなる波の音、そして粟島に沈む美しい夕日の見れる山北の町です。
 今までずっと仕事をしてきて、自分がなにか熱中してやれるもの、趣味といえるものがないことに気づき、焦りのようなものを感じていました。自分の心を落ち着かせてくれるもの、そしてそれを一人でやるのではなく、グループの中に入ってやりたい、という思いが強くありました。そんな時一枚のチラシが目に留ったのです。「70年代フォークをギターで弾こう」という3ヵ月講座を受講し最後に終了コンサートをやる、というものでした。「これだ」と思い迷わず受講しました。20代の頃弾くのを辞めて、押し入れの中に入ったままになっていたギターと、ここに来て30年ぶりに再会となりました。
終了コンサートで、湘南のフォークデュオ ブレット&バターと共演できたことも、ラッキーなことでした。
あの時受講した有志でギターアンサンブルのグループをつくり、年一回のコンサートに向けて練習しています。
 目をとじれば二つの故郷が見えてくる。
そして今自分にはギターがある。
ずっと続けていけたら・・・と思う。

リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)
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