2010年1月号 | ||||||||||
リレー随筆 「鮭っ子物語」 No.103 |
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鮭っ子杉っ子カジカっ子 |
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実家の前を流れるおおかわ「三面川」。幼年期のアルバムに祖父と河原を散歩している時の写真がある。当時はここにヤナ場があったらしい。 鮭が遡上して来る冬、ちょうどテンカラ漁の時期に対岸の新屋側で掛け逃がした鮭が下校中の私の前に流れ着き、拾い帰った思い出がある。先輩たちの影響で魚釣りに興味を持ち、本を買い集め評論家気取りであったが実践はいま一つ、支流の滝矢川でのカジカ取りとおおかわでの鮎釣りが唯一実践できた釣りである。今は埼玉県に居住しているが、秩父源流の名栗川(入間川)にて毎年カジカ取りを楽しんでいる。 おおかわの源流域には多くの自然林が存在しその多くは落葉性の広葉樹である。その落葉の腐葉土を経て雨雪が清流として生まれ変わる。その地域の山の香りをたっぷりと含んだ清流が我々を故郷へと呼び戻す。源流域の豊かな自然が在っての事だ。 二十年ほど前から松喰い虫によって山中の赤松が枯れ始め、ここ数年は「カシノナガキクイムシ」によって、ミズナラ、コナラ、栗の大木が消えつつある。もっとも燃料革命により石油燃料が普及したため燃料としての消費が減りナガキクイムシの繁殖し易い大木が増えたことも原因ではあるらしいが。他地域では地球温暖化の影響であろうか熊や猿が人里まで下り被害を及ぼしている。大陸方面を元とする酸性雨なども源流域原始林の自然破壊につながり危惧される。 さて新潟の山林は杉などの人工林が育ちにくい。降雪時の冠雪害や融雪時の圧雪のため針葉樹が直立し難い事が原因である。また住宅事情の変化や外国産木材の普及により国内産木材の需要は激減、その結果の林業衰退により人工林は荒れに荒れ放題、手入れもできず藪だらけになるばかりである。この頃は山蛭なども増えているようだ。 林業は九十年にも及ぶ「伐採と植樹・育林のサイクル産業」と言われるが現実は伐採のみの「切りすて林業」が実態となっている。伐採後植林せずに放置すれば保水能力も落ち山崩れ、水害等の自然災害が容易に発生する事になる。人工林の崩壊がおおかわの環境に深刻な影響を与えることは今後必至であろう。 流域の林業家がこの様な事を考えながら山を守っているのかどうかはわからないが、林業が再び活気を取り戻し同時に流域の山林環境保全も充実してくれることを切に願うこの頃である。 鮭っ子というよりは杉っ子となってしまった。 |
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