2009年4月号 | ||||||||||
リレー随筆 「鮭っ子物語」 No.94 |
||||||||||
北限の村上茶 |
|
|||||||||
転勤族だった私は昭和43年に故郷の村上を離れ、県内外11ヵ所を渡り歩き、今は新潟市に住んでおります。 転勤先々では、その土地々々の気候風土は勿論の事、気質や行事を数多く体験して来ました。そんな体験を通して、故郷村上の持つ独特の歴史や行事等をリンクさせて見る、余裕と楽しみに芽生えたのが平成10年頃でした。 丁度その頃、村上町屋商人会(あきんどかい)による「町おこし」がスタートしており、大変心引かれると共にその推移に興味と関心を持つようになりました。 まず、最初に企画されたのが、ウナギの寝床のように縦に細長い町屋造りの解放と、その町屋にひっそりと飾られていた「お人形さま」を一般の観光客に披露する「町屋の人形さま巡り」が平成12年3月にスタートしました。これが何と大ヒット、予想だにしない3万入超の観光客を呼び込みました。 翌年の平成13年9月には、村上大祭の時に「粗隠し(あらかくし)」として、各町屋で飾られていた「屏風」を、この機会に再度飾る「町屋の屏風まつり」が開催され、これも又好評で大きな話題となりました。続いて平成14年10月には、安善小路での幻想的な「宵の竹灯龍まつり」が、そして平成16年8月には、近代的に改装された店構えとなった町屋を元に戻す、町屋の外観再生事業を目的にした「村上町屋再生プロジェクト」がスタートして、既に11軒の再改装が済み、町並みに―体感が戻りました。 古い城下町村上に昔から残っていた、「町屋」「お人形」「屏風」等を活用した、これらイベントは高く評価され、全国から年間10万人を超える観光客が訪れており、地域活性化と共に大きな経済効果をもたらしております。 この流れの中で、私が村上出身と知ってる人達から何かと問い合わせが多く成り、案内がてら村上へ帰省する機会が増えた事は、村上出身者として何か誇りを感じたものです。 観光客が増えれば「お土産」が付いて回ります。地元村上の特産品として堆朱、鮭、そしてお茶が上げられます。この欄でも過去に先輩諸氏の、鮭に関する記事が多かったようです。 そこで今回は「北限の村上茶」についてレポートしてみようと思います。 村上茶の特色は、日照時間が短く、昼夜の寒暖の差が大きい地域性から、柔らか<引き締まった甘味と、香りが特徴です。その起源は江戸時代の初期、当時の藩主が地場産業として奨励する為、大年寄に宇治、伊勢から茶実を持ち帰らせたのが始まりと言われております。最盛期の明治時代には650haの茶畑を有し、紅茶の製造も盛んで「村上紅茶」として米国やロシアヘ輸出もしていたと言う歴史もあります。 しかし昭和40年代に入って茶畑の宅地化が進み現在は25haと激減しております。 このように衰退した「北限の村上茶」の復活のため、平成13年に若手の製茶職人が「村上茶手揉保存会」を立ち上げ、新種の茶樹を増殖し収量の拡大を図り、又昭和初期に機械化で途絶えてしまった、手揉製茶手法を復活させ技術の向上にも努力した結果、昨年には「全国手揉製茶技術競技大会」で他の有名産地を抑え最優秀賞を獲得した事で、改めて「北限の村上茶」の存在を全国に認識させた一方、地元では産地発展の弾みに成るものと期待されております。 又消費面では「美味しい村上茶」の淹れ方を習得してもらうため、「村上茶ムリエ」(お茶のソムリエ)を制定して認定者を養成し、瀬波温泉を含めた、多<の観光客に村上茶のPR活動が行われております。 村上では「その家の主がお客様にお茶を淹れるのが自然で当たり前」との風習の中で育ったことから、私は何の抵抗もなく、職場でも家庭でも、お茶を淹れて来ました。 定年後の今は、故郷村上を思い出しながら、毎日のように、急須で村上茶を淹れ、しばしの「間」を楽しんでおります。 お茶は「養生の仙薬」とも云われ、発癌抑制作用、抗酸化作用、利尿作用そして鎮静作用等色々な薬用があり健康飲料として見直されております。 お茶の淹れ方として、湯の温度と浸出時間には微妙な関係があります。一般的には玉露は湯の温度50~60度で2~3分程度の浸出時間、煎茶は湯の温度70度~80度で1分程度の浸出時間と言う目安はあるものの、「旨み」を追求したいなら、茶葉の量を多くし、湯の温度を低くし、浸出時間を長くする等の工夫で「自分好みの味」を探求してみて下さい。その上、気分転換に茶器に拘って見ては如何でしょうか。こんなゆったりとした時間の中で日本茶を堪能したら、心に余裕と充実感が生まれると思います。 村上に縁のある皆様にも「北限の村上茶」を身近に感じながら、お飲み頂ければ、懐かしい光景が思い出される事と思います。 そして機会がありましたら、「町おこし」で大き<変わった、故郷村上をじっくり闊歩して頂ければと思います。きっと新しい発見があるものと確信しております。 |
||||||||||
|
|
|||||||||
|