http://www.murakami21.com 村上広域情報誌2001
2009年11月号
  リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.101


鮭の鼻頭が削られていた

土屋 彰
(つちや あきら)
1939年生まれ。村上高校、学習院大学卒。
経営労務コンサルタント・社会保険労務士。
東京都在住。「越後・村上応援団」を結成。







「村上地域企業・商店活性化セミナー」(いわふね新聞社主催)での講演風景。
(平成20年7月15日)







首都圏の子供達に村上に来てもらい、地元の子供達との交流も深め、村上を知ってもらい諸々の体験を「夏休み絵日記ツアー」(汐美荘・大観荘協賛)風景。工藤達朗氏も協力して下さいました。
(平成20年8月25日~27日)








「夏休み絵日記ツアー」(汐美荘・大観荘協賛)風景。塩作り工房を見学。
(平成20年8月25日~27日)








「アカデミックセミナーin INUYAMA」(犬山市)での講演終了後、犬山城(国宝)の天守閣で。
(平成21年6月20日~21日)
 霙時期の実に寒い日である。
 「鮭がでるぞ-」との呼び声が住まいの本町に伝わった。
 三面川で捕れた鮭が、旧士族に無償で配られることを告げる今思うと風情あるものが、当時は自分が三面川まで鮭を取りに行かねばならなかったので、「またか-」という気持ちしかなく「嫌だな-」と思ったことしか覚えていない。
 しかも、このお告げが鮭の捕れる日には一日に数回もあった。
 三面川に着くと、育養所の人達が「寒いのにご苦労さん」と言って、付け木に書いた番号札(くじ引き用)を出してくれ、川原に並べてある鮭に付いた番号と自分が引いた番号と一致した鮭を渡してくれたものである。
 「小さい鮭に当ってくれよ!」といつも願った。
 小学校1年生の頃で、背も低く体力も無く、大きな鮭だと家まで持ち帰るのに大変な苦労であった。尻尾を縄で縛ってあり持っても頭が地面についてしまう。
 手はだんだん冷たくなりかじかんで、ついつい鮭を引きずってしまい、家に着いた頃には鮭もかわいそうに鼻頭が削られてしまっていた。
 鮭の配給が多い日には数匹もあったので、家では塩引きにして保存していたが、その塩引き作りも手伝わされた。寒い日に水と塩を使っての作業である。
 塩引き鮭を数十匹、廊下に物干し竿を吊るして干しておいたが、或る日の夜その物干し竿が折れてしまい、物凄い音で家族全員が飛び起きたことも鮮明に覚えている。
 しかし、その鮭のお陰で学校の授業料も出してもらったのだから、大いに感謝しなければと今は思っている。
 私は間違いなく「鮭っ子」である。
「故郷は遠くにありて思うもの」と言われているが、この年齢になると「故郷を何とか近くに感じたい」と思ってくる。これは私だけではないであろう。
仕事の関係上、全国に多くの友人をもっているが、自分の故郷の幾らかでもお手伝いをしたいと思い、昨年から「越後・村上応援団」を創り、村上の特産品をインターネットでの販売を紹介したり、瀬波温泉へ誘ったりもしている。
 しかし、残念なことには今一つ故郷の人達が「その気になってくれない」
 村上は、そんなに裕福なのであろうか? 食量の自給率が100%を超えている天然資源が豊富なためであろうか? 米・水・塩・魚・肉・野菜・海・温泉・酒などと数えればキリがない。地元故郷の人達は本当に現状に満足しているのであろうか!
 でも、観光に訪れる人達は決して村上に満足をしてはいない。
 私も多くの方々に村上を紹介したが、後日「村上は如何でしたか?」とお礼を兼ねて電話すると、「う-ん」と、はっきりした返事が返ってこない。どうも、「食事」と「サービス(歓迎の心)」に満足していない気がする。
・「何でもっと豊富な地元の食材をつかった料理を創意工夫して出さないのか?」
・「新潟からの交通手段が不便だよな-」
・「村上の玄関(駅・タクシー・観光案内など)対応が出来ていないよね-」
・でも、一方「海の側に温泉もあり、お米やお酒は美味しかったよ」
との声も聞かされる。
 また、日本経済新聞の平成21年8月22日付朝刊で、「心に染みるアカネ色、夕日の美しい宿」ランキングで、「夕映えの宿・汐美荘」が全国第一位に選ばれた。「日本海に沈む大きな夕日に感動」「刻々と変る景観は天下一品」「粟島と佐渡島の間に沈む夕日はすてきな思い出になる」などとのコメントがあった。「よかった」の一言に尽きる。
 「鮭っ子」の一人として、故郷が発展することは実に喜ばしいことである。
東京村上郷友会のメンバーも間違いなくそれを願っているに違いない。
遠くから故郷を見つめ、村上を愛する郷土愛溢れるメンバーと、地元の人達との交流も今後続けながら、村上の限りない発展を祈念して筆を置きたい。

 
リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)
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中村 英之
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