http://www.murakami21.com 村上広域情報誌2001

   リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.39

心のふるさと村上

 先日、20数年ぶりに村上大祭を楽しんだ。JR村上駅に降り立つと「皇太子妃ゆかりの城下町村上大祭」の幟がはためく。いつもはのんびりとしている昼下がりの駅前広場も祭りのせいか気ぜわしい感じだ。広場の一角に稲葉修元法務大臣の揮毫による唱歌「汽車」の歌詞を刻んだ立派な歌碑がある。『今は山中、今は浜・・・』で始まる「汽車」は村上藩士を父に持つ音楽家大和田愛羅の作曲によるもので年配の方には郷愁をおぼえる唱歌である。歌碑は昭和57年、東京郷友会の人たちによって建立されたものだが、大和田愛羅が村上ゆかりの人であることは正直いって小生も歌碑ができるまで知らなかった。幕末の動乱期に最後まで幕府に忠誠を尽くした村上藩を父祖の地とする人たちは大和田に限らず明治以降各界で大活躍をしてきた。その数は枚挙にいとまがない。歴史の町は人材輩出の地でもあったのだ。

 町中を行くと独特のお囃子とともに各町内のおしゃぎり屋台が練り歩く。伝統を誇る屋台のすばらしさ、町内の老若男女が打ち揃って祭りを盛り上げる光景も昔と変わらない。しばし、少年時代にタイムスリップした気分に浸りながら見入っていた。村上大祭が新潟県内の夏祭りの中でも随一と評価されるのも当然のことであろう。

 3年前、東京支社在勤中に村高時代の同窓生に誘われて同窓会関東支部の会合に出席したのが、村上と私を再び結びつけてくれたきっかけである。中学から高校までのわずか4年足らずの転校生の縁であったが多感な青春の一時期を過ごした忘れ得ぬ地である。荒波の日本海、初夏まで雪を頂く飯豊朝日連峰、そして、鮭帰る三面川、名湯瀬波温泉、その景観と村上弁の優しさに表れる素朴な人情、加えて今の世の中ではすっかり忘れ去られた律義さと気骨が村上の友人たちにはあるような気がする。そんな村上を私は大好きだ。

 最近の村上は、「町屋の人形さまめぐり」に始まる意欲的な地域おこしによって大きく飛躍しており県内は勿論、今や全国区の観光地として育ちつつある。この活動は地域活性化大賞やBSNドキュメント賞等々、各種のイベント賞を総なめにしている。村上の人達は古きを守りながらも進取の精神に富み、尚新しいのである。

 祭りの夕、お城山の麓の友人宅に着く頃深い緑の中から「カナカナカナ・・・」とひぐらしの鳴き声が聞こえてきた。新潟生まれの小生にとって村上は第二のふるさとである。県北の城下町村上の応援団の一人として、仕事を通じても何かお手伝いできればと思っている。


林 敬三
(はやし けいぞう)

 西蒲原郡巻町立巻小学校卒
大学卒業後(株)新潟放送(BSN)入社、ニュース取材や番組制作に携わり、報道部長、東京支社長
現在常務取締役
(昭和19年生まれ)







村上駅前の大和田愛羅の歌碑と筆者


















村上大祭のおしゃぎり屋台



リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)

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次回予告
大和田 清
(おおわだ きよし) 
昭和 年3月小学校卒業


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