吉川真嗣・美貴の二人旅 No.28 小さな旅 〜岐阜県郡上八幡 水を巡る旅〜 近頃よく20世紀は石油で戦争が起こったが、21世紀は水をめぐって戦争が起こるなどと物騒な言葉が聞かれる。 日本人にとって水はいつでもどこでも豊富にあふれる程手に入るものであり続けただけにショッキングである。環境問題が他国に大きく遅ればせながら、ようやく真剣に取り組まねばならない事柄として認識され始め、コンビニにスーパーに自販機に「水」が売られているのが当たり前になり、「六甲の水」とか「エビアン」とか名前がついてブランド化し個性がうち出され、あれよあれよという時代の急速な変化を感じる昨今である。 ところで今日はその「水」をテーマに町づくりに取り組んでいる、郡上八幡のご紹介である。 一般には「郡上おどり」で有名な所でこの「水をテーマに・・・」とか「食品のロー見本(サンプル)の産地」とかでもあることを知る人は「郡上通」の方であろう。 山間の懐に抱かれ川べりにうっすらと靄がかかるのが、なぜかこの町にはよく似合う気がしてならないのだが、徒歩の範囲でクルクルと猫の目のように景色が面白いほど変化するのがこの郡上の印象である。古き良き時代の民家の連なりがレトロな雰囲気の個性ある店の点在に変わり、現代に活かされた昔の洋館が目を引き、また別の地区には江戸や明治期の格子の平入りの建物が昭和期の建築に混在し、その間を川が縫い穏やかな山並みが借景となって、この土地の時間の堆積を感じさせる。 その中で際立って印象深いのが、生活・信仰・景観配慮・・・と様々の切り口を、水という側面で表現している数々の場が作られていることである。人々の生活に自然に溶け込んで継がれてきたものを、後から統一された美意識のもとに再生し、定着している感じである。普段は見過ごしがちなことの中に、これ程水がそこかしこに関わっているということを思い出させてくれて面白い。 右の写真は人が写っていないので、何の変哲もない1枚の写真であるが、実はここでは町の人々が簡単な洗濯物に来る場であるそうな。洗濯と言えば洗濯機を使うことしか頭に無い現代人にはタイムスリップしたような感じを抱かせる話だが、ここでは近隣の人々が昔日と変わらず「川に洗濯に・・・」の感覚でここを訪れ、一つの水を介してのコミュニティとなっている。またそれ故、交代で「川掃除当番」もここではあるそうであり、地域色を感じさせて興味深い。また家々の前には簡単なすすぎができる流れが可能な限り作られてもおり、緊密な地域間交流の場が何気ない日常の風景としてここでも展開されている。 便利さばかりを追ってきた現代の私達の生活に、一石を投じ、人間が人間を取り戻すための小さな足元を見つめ直した場の数々である。 水との関わりを、人間の五感にそこはかとなく感じさせる形で町のあちこちに表現展開している郡上は、今までの歩んできた歴史と積み重なり、交差し、独特の個性を放って人々に何かを発信している地である。 水について一考してみたい方、是非郡上八幡の「水の場巡り」をされること、おすすめである。 |
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