2024年10月号 | ||||||||||||||||||
リレー随筆 「鮭っ子物語」 No.252 |
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遠州浜松より村上時代を振り返る〜そして今、浜松で(その1) |
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村上の社宅時代 昭和19(1944)年秋に父は熊本から新潟県村上町グンゼ(郡是製糸工場)に転勤し、ようやく馴れた(熊本)の友達とお別れした。今でも仲良しになった友達の名前と顔は目に浮かぶ。 熊本を出て、京都、富山と親の実家に泊まり、ようやく父の転勤先の新潟県村上町へ長い汽車の旅。村上駅に着いた時は駅いっぱいの大勢の人でびっくり、あとで聞いたら会社の迎えの人たちだったとか。空は曇っていたものの町に入った途端、目の前に山が見える。子ども心に何だか急に日本の最果てに来た・・・と淋しくなり怖くなった。でも住んでみれは今では第二の故郷になった。 会社の正門に入ると大きな池があり、村上での生活が始まったが、生活道具は着くまでは会社の人たちが色々とお世話をして下さり町の学校へ転入学。(村上は城下町なので町民と士族に分かれていて士族は本町校、私たちは町の学校へ)。終戦後は二つの学校が合併し村上小学校と改名された。冬になると雪、吹雪で道が狭くなり学校も遠かったので、妹は泣きながら皆の後から付いていった。初めての冬、藁靴を作ってもらった。 グンゼ工場内には女工さんたちが大勢寮生活をしていた。お昼休みには、部屋によく遊びに行ったり、社内の大浴場にも一緒に入ったりして、本当に楽しかった。また、家が大きく離れにはカイコ部屋があり、桑の葉をかご一杯に掴み、遊びの途中にカイコの世話の手伝いをした。めったに経験できないことをやり、良い思い出になった。 おやつは、母に隠れて、友達と工場敷地内の桑畑に入り、桑の実を一杯食べた。口が紫色になってしまい、ばれて良く叱られた。家でのおやつは工場内で糸を引いた後のサナギもらって、フライパンで砂糖醤油で煎り、甘くしたサナギのおやつをいつもおなかいっぱいに食べた。初めは虫が気持ち悪かったけど慣れると、とても美味しかった。今でいうとイナゴの佃煮と似ていると思う。 昭和19(1944)年秋から冬、グンゼ工場には学徒動員といって先生が高等科の生徒さん(今の中学生)を連れ、大勢きれいに並んで号令をかけながら仕事に来ていた。工場内の男の人達は、出征して会社から去って行った。父には赤紙が来なかったので、身体でも弱いのかなと思って聞いてみたところ、日本の落下傘部隊に必要な生糸を作る仕事をしていた、生糸は国の必需品で絹の落下傘が必要だから、とのことでした。
終戦後、外地で苦労し引き上げてきた家族を迎え入れ計5世帯で同居し、賑やかになり喜んでもらえた。皆戦争が終わり喜び半分、心配半分の時代だった。 終戦後、アメリカの人が大勢、会社の中に入って来た。着物を縫っている母に、赤い着物が欲しいと分からない英語で指差していた。私も母も怖くなり、来る人達に赤い綺麗なきものを渡したものだ。でもその代わりにチョコレートをもらった。アメリカ人は戦争中でもこんなに美味しいものを食べているんだと、ビックリした。同じ人間なのにと。 父はグンゼを辞めてから、野潟の海岸に製塩工場を設立した。多くの人が働いていた。私達も夏には海水浴を楽しみによく泊まった。高校の時から父は留守がちになり、1年に2回衣替えの時しか帰って来なくなった。どうして?教えてくれなかった。あとで分かった話、学生時代からグンゼ時代、産業科学技術が完成したとかで国の特許を取得、日本各地にある生糸工場へ技術指導をしていたとのこと、たまに村上に帰って来てもいつも原稿を書いていた。自分の母校の東京農工大学の講師として東京に通っていたとも聞いてびっくりした。現在国の科学技術遺産として残っているとのこと。 私の高校時代、友達に岩ケ崎という海の近くから自転車で1時間かけて通学していた人もいた。上はセーラー服、下はもんぺ、夏になると海女さんになる。その事を聞き、琴を習っていた私は、これにはびっくり。私は高校卒業後、母の反対を押し切り、これからは女の人も働かなくてはと村上市役所の社会福祉課に就職、市の職員として保育園勤務。国家資格の保母資格(現在の保育士)は、その当時はまだ保育大学がなかったので、信州大学に開設された夏季保育講座を受講して全科目を受け合格し、資格を取得した。 昼はお勤め(先生と言われた)。子どもたちは2歳児、3歳、4歳、就学前。各年齢別に受け持ち、運動会、敬老会、クリスマス会等とても楽しかった。 ****** 今回のリレー随筆は筆者の自叙伝の『佐藤章子 自分史』(2018年月22日発刊)から、著者の許可を得て、抜粋して転載しました。(pp.8-11) |
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