2023年3月号 | ||||||||||||||||
リレー随筆 「鮭っ子物語」 No.233 |
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【岩船の舟送り】 |
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1.中国 東アジアの沿海部には、大きな木造船を作って、祖先の霊や、祟りをする疫病神を海に送り出す儀礼がありまあす。岩船の七夕祭りに行われる舟送りは、この系統につながるものではないか、というのが、私の推定です。以下、中国、朝鮮の例を挙げて、岩船と比較してみます。 Ⅰ.中国 中国では、七月十五日のお盆の祭りに水死者の霊や、無縁仏の霊を船に乗せて海に流し、西方極楽浄土に送る慣習があります。次の写真は、シンガポールの福州人の舟送りです。 |
筆 者 |
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(写真1)シンガポール福州人の盂蘭盆会の舟送り (1982年8月) |
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Ⅱ 朝鮮の龍王祭 済州島の済州島健入洞本郷堂のチリモリダンクッツがあります。龍神と龍王夫人を迎え、航行安全、豊漁を祈り、併せて厄払いとして、厄神を舟に乗せて送り出します。次の順序で行います。 (1) 大竿立て;降臨する神の憑代として、4.5メートルの大竿3本を立てる(F205)。 大竿の間に綱を渡し、神名を書いた旛を吊るす。龍王大神、龍王夫人、戸長、女美など。その前に祭壇を作り、男巫が祭場を封禁する結界の舞踏を行う。 (2)初監祭;主宰する巫女は、宇宙開闢神話、人類誕生神話から現在まで一貫した神話群を語りながら、神々の降臨を請う。神域の門を開き、神々が降臨ると、神意を伝える。 (3)出物供宴;祭壇の供物の名を言いながら、神々に勧め、願いごとを依頼する。神意は、占いで判断する。 (4)本郷ドゥリム;男巫が本郷神である都元帥観察地方官(将軍)、龍王海神婦人に懇請し、村の平安を祈る。 (5)竜王迎え 男巫1人、降臨する龍神の憑代となる竿を捧持する。尖端に案内役を務める鳥 の作り物を付ける。巫女2人、歌いながら、祭壇の前を周る。龍王とヨンドン神(燃燈)を迎え、航海安全と豊漁を祈る。 (6)厄祓い 男巫、顔を白布で覆って目鼻を付けた水死者の死霊に扮し 呪文を唱え、厄祓いの呪文を唱える。終わって、わらで作った舟に厄神(水死者の霊)を載せて、海に流す。 |
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(写真2)厄祓い(藁で造った小舟):済州島 (大韓民国文化公報部書1989年) |
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(7)送神;初監祭で招いた一万八千神を送り返す。 巫女たちは、上下に体をゆする跳舞を繰り返した後、狂乱状態に陥り、一人称で神託を語る。参加者は合掌しながら、神に祈願する。宗教性の強い儀式である。藁舟を海に流す点に、水幽の祟りを畏れる鎮魂儀礼の特色が出ている。 Ⅱ 岩船の舟送り この種の水死者を弔う儀礼は、日本の漁村にもあります。ここでは、例として、新潟県岩船郡岩舟町の七夕の船送りをあげます。次の順序によって進行します。 1.船造り 町内ごとに、木で船体を作り、その上に竹で枠を作り、これに短冊を吊るす。人形も多く吊るされる。祖先の霊を祭る意味もある。 2.海岸集結 夕刻近く、各町内は、若者により、それぞれの七夕船を海岸に運ぶ。舟には提灯をつけて明かりをとる。13の町内が船を出す。13隻が並ぶ。 3.海浜供養 海岸に据えられた船に、順番に僧侶が読経して、水死者を供養する。暗闇の中に読経の鈴の声が響く。 4.放船 読経が終わると、若者が船を押して、海中に放つ(写真3)。 |
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写真3七夕船の放出;新潟県岩船町 (2016年8月) |
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船は、浜辺から遠ざかり、海上を漂流して去る。 この行事は、旧暦七月七日に行われるが、七月十五日の盂蘭盆会の変形であり、水陸道場の一環として行われている。中國の水陸道場、韓国の水陸齋、水陸会に当たるものである。 村上の習俗も海を通って南方から伝わった可能性があるように思われる。 |
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