2022年12月号
  リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.230


祭りと町と商店街 

 コロナ禍で、村上大祭、七夕祭が、3年間行われなかった。3年のブランクは、予想以上に大きなダメージで、特に七夕祭の獅子舞は、深刻だ。獅子舞を覚える中学の3年間の経験が全くない。磨きをかける高校時代もなかった。

 獅子舞を全部覚えていた幼い子供たちもすっかり忘れてしまったと聞いて驚いた。 

 中学生になると見ていて楽しかった獅子舞を自分が踊る事になる。できない辛さと独特の雰囲気に耐えられないものがある。

 でも、初めからできる事などあるはずがなく稽古を続けて下手くそながら何とかできるようになった思い出がある。

 本番は、下手でもお客様が見てくださる。町内の先輩に褒められた(?)のは、「お前の獅子舞は短くて良い」だった(笑)

 七夕には、「買い物帳」と言うのがあった。超アナログの日本版クレジットシステム。町内で買えるものは、町内で買い無いものは、隣の町内、安いからと言って知らない店で買うと怒られた。

 買物帳で飲みに行き区長様に大目玉をもらった者もいた。

 獅子舞存続の危機に一石を投じたいと市のコロナ対策補助金を使って「だすけ村上獅子舞の宴」と言う催しのお手伝いをする事になった。令和5年1月29日(日)、イベントの少ない時期にあえて設定した。

 19町内のうち半分でも踊ってくれれば良いと思っていたが16町内が踊ることになった。それだけ危機感があったのだろう。

 全町内の獅子頭、太鼓、御幣、錫杖を展示する。

 村上の特産品の販売ブースも併設して市外の方にも七夕まつりと獅子舞を知ってもらう機会にしたい。

 獅子舞にちなんだ特製ラーメンやスイーツも作る事になっている。

 人形様めぐり、屏風まつり、宵の竹灯籠まつり…すばらしい催しが、始まって20年が過ぎた。

 当初のような賑わいとは、少し様子が変わってきているが、続ける事が肝心なのだと思う。お客様だけが楽しいのではなく迎える者も飽きずに楽しむ。

 鮭は、北海道の方が、はるかに水揚げが多いのだが、鮭に対する思い入れと慈しみは、村上が強い様に思う。

 催しに対する思い入れも同様で、祭りで培われた独特の気持ちがそうさせているのだと想像できる。

 有るものを活かした事が、評価された。村上の人々の優しさ、「酒・鮭・人情(なさけ)」と言われるおもてなしの心、人が、村上の最大の魅力なのだ。

 何度も村上を訪れる観光客が多いのは、村上の人に魅力を感じるからなのだろう。

 お祭りの様にずっと続く催しに育って欲しいと願っている。

 村上大祭の国指定重要無形民族文化財の証書の裏面には、存続できなくなった時は、指定を返上する旨が記されている。続ける事が、種火を消さない事が肝心なのだ。

 町と祭りを支える地元の商店街で、できるだけ買い物をして頂きたい。

 店も大型店やネット販売の価格には、敵いませんが、適正価格を意識して、買ってもらえる品揃えと努力を続けますから。



稲垣  晴一
(いながき せいいち)
村上市上町在住
角長呉服店店主
生まれて2週間後に新潟地震
新潟県立村上桜ヶ丘高校商業科卒業
京都の呉服問屋にて7年間修行後家業を継ぐ
村上市中央商店街振興組合理事長








筆 者

















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リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)
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