2021年6月号
  リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.213



我が家の家族旅行


 私は旧岩船郡神林村の農家の三男坊として生まれ、高校卒業まで住んでおり、現在は埼玉県に居を構えております。
 故郷を離れて今年で54年になります。地元はご多分に漏れず過疎化が進んでいるとの話を聞くたびに淋しい思いをしております。
 時代の流れと言えばそれまでですが、すでに両親が他界して長兄が実家を守っているものの、長兄が他界すれば誰も実家を守ってくれる者はおりません。
 故郷で生活したのは18年間ですが、その3倍の年月を埼玉で過ごしても、何年たっても故郷のことを忘れたことはありません。誰しもが故郷は心のよりどころであり、「困った時には実家があるさ」と思いながらここまで生きてきたのに残念なことです。
 私は約40年間警察に奉職し、そのほとんどが刑事であった関係で、結婚して子供が生まれ家族が増えても、いつ事件が発生するか分からないという理由で当時は休日であっても自由に遊びに行くことは制限されており、他の家庭のように家族旅行はできませんでした。
 子供がまだ幼稚園入園前で官舎住まいの頃のことですが、家内から「〇〇ちゃんの家はお父さんがいるのに僕の家のお父さんはどうしていないの」と言われたという話を聞かされ涙が出る思いをしたこともあります。
 また、笑い話ではありませんが、事件によっては朝暗いうちに出勤し、夜寝静まってから帰宅するという事は度々あり、子供もそういう環境に慣れてきたのか、たまたま休みになった日の朝、起きてきた子供から「お父さんしばらく」声をかけられ、返事に困ったこともあります。
 こんな我が家の生活環境でも1年に1回夢のようなことが起こるのです。それは夏休みです。夏休みに自分は一緒に行けず迎えに行くだけでしたが、私の実家に帰省させることが唯一の家族旅行であり、子供が学校に行って夏休みの出来事を発表する時に「僕は新潟へ行って4回泊まってきました。海にも毎日行きました」と言うと他の子供たちは「すごいなぁ」と言ったそうです。子供はそれが自慢で毎年のように新潟へ行くことを楽しみにしていました。
 ただの帰省ですが1年に1回の実家へ顔見せが子供にとってはとても楽しい行事だったようです。
 このようなことが10年以上続き、今でも毎年ではありませんが家族で帰省し、故郷の空気を胸いっぱいに吸い込んできます。
 村上は鮭を代表として、銘酒〆張鶴、大洋盛、大観荘せなみの湯、汐美荘等がある瀬波温泉、景勝地笹川流れや夕日ライン、そして何と言っても皇后陛下雅子様の結婚前の本籍地があったなどテレビでも色々な番組で紹介され有名になってきました。
 日本を代表する米コシヒカリは魚沼産が有名なために表に出ませんが、実際には魚沼産のコシヒカリは日本中で販売するほどの量があるはずもなく、それを補填しているのが佐渡米と岩船米だそうです。
 このほかにも村上牛や堆朱、産地北限のお茶は知る人ぞ知る地場産業です。
 意外と知られていないことは世界の空を飛ぶ航空機のギャレーやラバトリーは村上市にあるジャムコ新潟が日本一のシェアを持っているとのことです。
 わが故郷は食や文化にとても恵まれた土地柄であることを普通だと思っていたことが恥ずかしく思います。
 今は孫を連れて数年に1回帰省するだけになってしまいましたが、鮭、酒、人情(なさけ)の村上に今後も健康と社会情勢が許す限り家族で故郷を訪れようと思っております。



松村 孝雄
(まつむら たかお)
神納小学校 昭和36年卒
村上高校19回卒(昭和42年)
昭和42年7月埼玉県警察官拝命
平成20年9月退職
埼玉県久喜市在住(72歳)







こんなものを貰いました






孫娘と一緒に自宅の庭で (筆者)







ウオーキングコースの桜









東京村上市郷友会ホームページ リンク

リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)
「鮭っ子物語」バックナンバー 
東京村上市郷友会
村上高校同窓会(リンク)
村上高校同窓会関東支部(リンク)
新潟県人会(リンク)

次回予告
表 紙 | WEB情報 | サイトマップ | バックナンバー | 検索・リンク 

発行:デジタルショップ村上
新潟県村上市・岩船郡7市町村 月刊デジタル情報誌 2001年1月1日創刊
(c)2001~murakami21.jp All rights reserved
Produce by Takao Yasuzawa