2021年1月号 | ||||||||||||||
リレー随筆 「鮭っ子物語」 No.208 |
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思うこと |
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村上に対する思いも、「中学生までの村上」、「高校時代の村上」、「学生時代には東京から見た村上」「社会人となってからは他の都市と比較した村上」と、年令と共に微妙に変化したように思います。 現在は村上市と合併しましたが、高校時代まで過ごした神林村塩谷は漁業・農業・商業が混在した集落でした。遊ぶ事に事欠かない豊かな自然環境の中で育った田舎者の私にとって、村上は都会であり、憧れの町だったのです。第一に言葉が違っていました。塩谷の荒々しい話し方と違い、何かおしゃれに感じた事を今でも忘れられません。 格式ある料亭、文映と銀映の2つの映画館、スポーツ具店、中華そばの「ちくに」、多くの和菓子屋、それに洋菓子屋の「トラヤ」等々、城下町の品格に加え、都会を感じさせるお店が多く、活気に溢れていたように思います。初めて映画館で映画を見たのは銀映で上映されていた「ベンハー」で、中学生の時でした。また、和菓子屋さんが多いのは、城下町の為か、お茶をたしなむ方が多い故と聞いたことがあります。しかし、当時の村上名産は、鮭より「北限のお茶」の産地で有名だったように思います。 今では、村上は全国的に鮭で有名になりましたが、塩谷の海では、荒川へ遡上する前に定置網で捕獲していました。実家には、細長い四角の木桶があり、塩引きを作るときに使っていました。家の梁には吊るすための5寸釘が今でも多く打ち付けてあり、亡くなった父は、「見たくないくらい毎日おかずとして食卓にのぼった。」と、言っておりました。遡上する前に捕獲した雄鮭は美味しく、味噌汁に入った白子のフカフカした食感は忘れられません。また、取れたての鮭の子(イクラ)はバラバラと腹から出てきます。塩引きの切身は大晦日の夕食の主役として食べました。冬期間で食べきれなく残った身は、「酒びたし」として夏以降の「つまみ」となりました。上京してからも、母がイクラを毎年送ってくれました。このイクラ作りのレシピは母から家内に受け継がれ、我が家の毎年の名物料理となっております。市内の家庭での作り方と同じなのか分かりませんが、実家の鮭文化がありました。 高校時代は、汽車の吐く煙を見て、競争しながら平林駅まで急いでペダルを踏みました。駅前に自転車を投げ捨てて汽車に乗ることも度々ありました。車内では荒川中学、関川中学出身の高校生が乗っており、活気に溢れていました。村上駅を降りると大勢の高校生が革靴の音を響かせ、登校する姿は忘れられません。しかし、冬季の3学期は雪の為、通学が難しく市内の親戚にお世話になりました。 上京後の学生時代は、出身地はどこかと、よく聞かれ、「新潟県の村上市の隣の村です」と答えると、「水上?」と聞き返されることが多く、村上の名前はあまり知られていなかったように思います。私は、「お茶の北限生産地の城下町です」と答えていたように思います。正月の鮭料理、ゴールデンウイークのシラスの踊り食い、夏の渡り蟹が楽しみで毎年欠かさず帰省しておりました。 社会人となり、多忙のため村上とは距離がありましたが、暫くすると「鮭の村上」として知られるようになり、説明しなくとも済む様になりました。また、行ってみたいという人も多く、数年前には会社の先輩や同僚8名で訪れました。昼はゴルフをし、お城山を始め市内の名所を巡り、夜は「能登新」と「千鳥」を案内し、料理を堪能して頂きました。また行きたいと言っている方もおり、嬉しい限りです。 時代の流れでしょうか、現在は国道7号線沿いに大型商業施設が多くみられ、市内の街並みが寂しくなったように思います。 仕事柄、出張が多く、村上と比較しながら全国の街を見ることが出来ました。村上は、古いものを大切にする、ゆったりとして心の和む、品のある、更に美味しいものが多くある城下町です。個人的な印象ですが、京都や金沢とは異なる、島根県松江市のような落ち着きのある町として、あり続けて欲しいと願っております。 私にとって村上は「都会の村上」、「活気のある村上」、「伝統のある鮭の村上」と変化してきました。特に青春時代の大きな舞台となった村上には、特別の想いを持っております。今後どのような街に変化して行くのでしょうか?楽しみです。一考ですが、お城山を中心に「武家の町」をもっとアピールしていくのも良いのではないかとも思っています。 |
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