http://www.murakami21.com 村上広域情報誌2001
2009年12月号
  リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.102


故郷を離れ32年目の回想」
(~オレゴンでの不思議な出会い)


中村 英之
(なかむらひでゆき)
昭和46年山辺里小学校卒
現在、㈱IHI検査計測に勤務
横浜国立大学大学院博士課程修了
博士(工学)
ISO(国際標準化機構)TC135(非破壊検査)SC9(AE)日本代表
茨城県土浦市在住
土浦市体育協会スキー部所属








小学1年生・木造校舎前にて
(最後列右端が筆者)










小学生のころ、高根のてんがい牧場にて










米国から帰国したころの大島さん一家と私の家族(左から大島さんと私の長女、大島さんの奥様と私の次女、私の妻と大島さんの娘さん)








2009年10月、自宅にて
 私は、昭和34年に山辺里に生まれ、男3人兄弟の末っ子として育てられた。父(泰夫)の実家は、屋号を「糀屋」と呼ぶ江戸時代から代々続く庄屋であり、母(イチ子)の実家とは隣同士ということで、父方と母方の従兄弟達とは、兄弟のように育った。
 私の両親は共稼ぎであったため、私は母方の婆様(曾祖母)に育てられた。私に物心がついたころには、婆様は既に80歳を過ぎていたが、私たち兄弟3人と従弟達3人が幼稚園に通うまで育ててくれた。兄が遠足の日には、うらやましがる私を見て、婆様は、「遠足」と称し、砂糖でまぶした握り飯を作り、私と同い年の従弟を近くの神社につれて行き、甘いおにぎりをほおばらせてくれた。
 天気が良い日には、婆様は縁側に座り、目を瞑ったままで、床をたたき調子をとりながら「わたしゃー、真室川の梅の花ー、よいよい…」と小声で歌っていた。その婆様も私が大学生の時に97歳でこの世を去った。

 私が小学生だった昭和40年代初めは、ようやく稲刈機(コンバインではなくバインダー)が出始めたころで、稲は機械または手で刈り取り、刈った稲は「はさば」で天日干しした後に作業場で脱穀するというのが一般的であったと思う。
 この時代は、農作業の機械化がそれほど進んでいなかったため、田植えや稲刈りは親戚総出の大仕事であり、農村地域にある山辺里小学校には田植え休みや稲刈り休みの習慣が残っていた。私の家は農家ではなかったが、農繁期になると母の実家の田んぼ仕事を手伝った。田植えでは、腰が“やめる”のを我慢しながらせっせと植え、だいぶ植えたと思い腰を伸ばすと植えた苗は幾らでもなく、振り返ると田んぼの向こう端ははるか遠くにあり、田の大きさと農作業の大変さを実感したことを覚えている。秋になると金色の田んぼに稲を干すはさばが建ち並び、夕暮れ時には、どこかの燻炭焼きの煙が漂い、「あの燻炭焼きの中にサツマイモが入っていればきっとおいしいだろうな」などと思いながら家路を急いだことが遠い記憶となっている。故郷・村上を想い出す時、現在の風景ではなく、少年期を過ごした山辺里ののどかな田園風景が浮かび、なつかしく、そこに帰りたいと思うのは、私も故郷の川に帰る鮭の如く故郷への想いが深く刻まれているためだと思う。

 高校を卒業して直ぐに関東に出た私は、神奈川県内の大学を卒業後、都内にある重工業関連の会社に就職した。
 その後、私は、結婚し、転勤や引っ越しを繰り返す中で、長女、次女が生まれ、現在住んでいる茨城県に居を移したのは昭和63年秋のことである。
 昭和63年と言えば、私にとって忘れられない、不思議な出会いがあった。その年の8月から、社命にて米国・オレゴン州に5ヶ月間出張する機会があった。米国での単身赴任生活も終わりに近づいたころ、私が勤務する会社に新たに入社した大島正弘さんという方が奥様を連れてオレゴン州に赴任してきた。私は、日本の食材が手に入るスーパーを案内したり、これから米国で生活してゆくうえで必要な情報を伝えたりし、数日後に帰国した。
 やがて、数ヶ月後、大島さんも日本に帰国し、社内でいろいろと話してみると、なんと大島さんは関川村の出身で、私と同じ村上高校の卒業生、しかも私の祖母と大島さんの祖父は従兄妹どうし、私の叔母(母の弟の連合い)と大島さんのお母上が従姉妹どうしということが判明した。
 まさか米国のオレゴン州で、初めて会った人が親戚であったとは、これはご先祖様のお導きか?神の仕業か?などと思いたくもなる、なんとも不思議な出来事であった。
 以来、大島さんとは家族ぐるみのお付き合いをさせていただいている。

 最近、無性に大海が食べたくなり、お袋の味を真似て家で作ってみた。大海は、お祭りやお神楽などめでたい席にはつき物であるが、大海を食べながら、今度のお祭りには帰ろうか?などと思いつつも、仕事に忙殺され、なかなか帰れない日々が続いている。
 
リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)
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