http://www.murakami21.com 村上広域情報誌2001 2005年12月号

   リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.55

鮎と鮭とみすゞと
 滔滔と流れる清冽な三面川、高度成長時代にも公害から身を守ってきた・・・私の故郷である妙高山麓の河川は、化学工場、川原の砂利採取で、清流を失った。村上を訪ねる度に羨ましく思ったものだ。それにしても豊富な水量だ。故郷を忘れず回帰・・・鮎や鮭、どんな知覚、触覚、どんな思いで遡上しているのだろうか。不思議を通り越して、感動を覚える。
県人会の旅行で初めて瀬波温泉に泊り、露天風呂から眺めた夕映えと戯れる波に煌く光、思わず感嘆の声を上げた。
夕景で感動した場所は四ヵ所あった。四十余年のファン歴だが天才童謡詩人“金子みすゞ”の墓詣でに赴いた時の夕景だ。仙崎(長門市)の青海島の高台から眺めた夕日、煌く波紋と眩い夕映に息を飲んだ。他はアフリカの西の果て、モーリタニアのヌアクショットの海岸のリゾートホテルの砂丘に立った日、大西洋に沈む巨大な夕日、ケニアの草原(サバンナ)を夕日がオレンジ色に染まった中、地平線を行く象の親子、そのシルエット、感動が余韻を残した。
漸く、日本も景観法が成立し、観光立国の第一歩を踏みだそうとしている。
世界一五三ヶ国を歩いて見て知ったヨーロッパのユニバーサルデザインの概念、彫刻された建物の外装、旧市街の保存、街路樹、河川、公園、森林、農耕地帯の整備と保存、そこは観光という経済繁栄の花が咲いていた。白い家並も観光になる。シャンゼリゼ、カサブランカ、アルジェ等の白亜街は感動一杯だ。
冬の白一色、黒と褐色の村上の町屋は癒しの空間だ。豊富な湯量の温泉、積み重ねた遺産“民工芸品”伝統ある大祭、これらに雪を演出したら村上市の経済活性化に貢献するだろう。
ブランドにもなっている百余りの鮭料理、銘酒と一体だ。昼食で味わった“はらこ丼”、縁あって、四年前に明治十二年発足した栄光ある“村上市郷人会”が催した“三面川の天然鮎を食べる集い”に招待され味わった鮎の旨さは筆舌を尽くしがたかった。
偖、汽水と淡水域を往復できる鮭と鮎・・・天命か、地球でも魚種の少ない寒い地域に住む人々は昔から、当たり前に副食、保存食としてきた。心優しい“みすゞ”の詩を味わって改めて、天の恵みと魚の犠牲に心から感謝したいと思う。

       大  漁
  朝やけ小やけだ  大漁だ
  大ばいわしの   大漁だ
 
  はまは祭りの  ようだけど
  海のなかでは  何万の
  いわしのとむらい  するだろう

安全、安心、笑顔が咲いている町、ホスピタリティが久遠の発展に繋がると信じます。


金子 重雄
(かねこ しげお)
東京新潟県人会 副会長
川口市在住







お城山から三面川を眺める








鮭の遡上(イヨボヤ会館通路イラスト)








観察護岸(イヨボヤ会館)
リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)

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磴 正雄(いしばし まさお)

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