2021年2月号
  リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.209



村上、そして音楽

               
 昨年暮、NHKがベートーベン生誕250年を記念して行った人気投票で選ばれた曲に想いを巡らせていると、他の作曲家の懐かしい器楽曲や歌も脳裏に浮かんだ。私は、楽器の演奏はできないし、歌唱が得意ではないが、幼少のころからレコードやラジオで音楽を聴いたり、歌を口ずさんでいる。
 昭和15年新発田で生まれ5歳から住んでいた村上駅前の家屋が、翌年春に全焼、家具の大半が消失したが、運良く一部破損した蓄音機と数枚のレコードが運び出されていた。
 火災後、小町の警察署に隣接した町屋に転居し、小学校4年まで過ごした。小町で体験した村上大祭でのおしゃぎりや七夕祭りの思い出が深く、現在住んでいる神戸市の東灘図書館に展示されているだんじりを見ると、おしゃぎりを連想する。
 高校2年夏までは田端町に住み、月夜にレコードで聴いたベートーベン「月光」、ショパン「幻想即興曲」、ラジオ番組”のど自慢”の入賞者が歌った古関裕而「イヨマンテの夜」「長崎の鐘」、プッチーニ「歌に生き恋に生き」「星は光りぬ」が耳に残っている。ある時、蓄音機の構造に興味を持ち、ケース板を開け、レコードの回転速度を一定に保つ調速機の原理を理解した時の感動は今でも覚えており、これが大学で精密工学を専攻したきっかけかもしれない。当時のSPレコードを今でも時々聴いている。
 高校2年秋から卒業までは、細工町のお寺の一室で起居していたが、毎朝ラジオからデパートのPRと共に流れるチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」、NHK番組・希望音楽会のテーマ曲・ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」が懐かしく、今でもこれらの曲がプログラムに入っているコンサートを見つけるとチケットを買っている。リタイア後、サンクトペテルブルグでチャイコフスキー「くるみ割り人形」のバレーを観劇中に、高校2年3学期に催した予餞会でダンス部員が劇中の一曲「花のワルツ」を踊ったことを突然思い出した。
 なじみ深い唱歌「ふるさと」を歌うと、村上での路上スケート、橇遊び、泳ぎを覚えた三面川、笹川流れでのキャンプ、お城山散策、軟式テニスの合宿、仮装行列での女装、鷲ヶ巣山の雨中登山等の情景が眼に浮かぶ。
 仙台で遊学中にはよく音楽映画を観に行った。ヨハン・シュトラウス「皇帝円舞曲」をテーマ曲とした映画を観て、買ったレコードは今でも持っているし、テノール歌手タリアビーニ主演の「忘れな草」の主題歌が印象深く、歌いたいと思いながら半世紀過ぎた頃に、チャンスがあってイタリア語の原曲を覚え、時々口ずさんでいる。
 また、大学の研究室で休憩時間に先輩がテープレコーダーで聴かせてくれたベートーベン「交響曲7番」に感銘し、数年後ドイツ出張の際レコードを買ってきたこともある。
 1964年神戸の会社に入社し、計測装置の開発、製品化に注力する傍ら、大阪や神戸での演奏会に時折行っていたが、リタイア後は西宮に新設された兵庫芸術文化センターでの定期演奏会や催しへよく通っている。そして、70歳を越えてから、ベートーヴェン「第九交響曲・合唱付き」に参加する機会を得て年末に西宮の芸術文化センターで歌い、大阪城ホールで開催の「1万人の第九」に参加したこともある。しかし、残念ながら昨年はコロナ禍で西宮での公演は中止になった。
 また、村上高校同窓会関西支部の催しや、クラス会では校歌を斉唱している。数年前には神戸市有馬温泉でミニクラス会を開催したこともあった。
 早くコロナ禍が収まり、昨年中止した同窓会やクラス会を開催出来ることを願っている。



唐津 建春
(からつ たけはる)
昭和33年 村上高校卒
神戸市在住







だんじり・東灘図書館にて




サンクトペテルブルグで
「くるみ割り人形」観劇




村上時代の級友と有馬瑞宝寺公園にて(向かって左端が筆者)

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リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)
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