2020年11月号
  リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.206



村上応援歌
 ―わずかばかりの恩返し―


 私は村上駅前の田端町で生まれ、高校を卒業するまで村上で暮らしました。
 村上での18年は、その後の人生を形づくる多くのものを私に与えてくれました。
 腕白で奔放なふるまいを包み込んでくれた小学時代、社会に目を向けることを教えてくれた中学時代、仲間との出会いとふれあいを与えてくれた高校時代。
 あたかも大海に向かう鮭の稚魚のごとく、私は村上の地と村上の人々によって育てられました。
 本当にありがとうございます。
 村上を離れて53年、充実した日々を送ってきましたが8年前に大きな病にみまわれました。
 このまま病に負けてしまったら、私を育ててくれたふるさとになんの恩返しもできない・・・
 今の私にできることはなんだろう・・・
 悩み、考えました。
 そして私がいてもいなくても、他の人に伝わっていく歌という媒体で、村上の魅力を伝えていこうという結論に至りました。
 編曲を義理の息子に依頼し、できたのが『越後の北の』という歌です。
 広域になった村上の人たちの心がひとつになることを願い、歌詞には市内のほぼ全域を登場させました。
 そして村上を知らない人にもこの歌を通して、村上に興味を持ってもらえたらという願いを込めました。

【村上へのおもい 第1話】
越後の北の 武士(もののふ)たちが 守りつづけた 臥牛の城
苔むす石垣 残るのみ 青い三日月 哭(な)いていた
ああ愛(いと)しさ 心の町よ あの日あの時 帰りたい


 戊辰の役に翻弄された村上の武士(もののふ)たち。時代の移り変わりを見きわめ、世渡り上手に立ちまわっていたら村上の歴史は大きく変わっていたかもしれません。
 しかしそのようにできなかった、いや、しなかった村上の武士たちの愚直さを私は愛おしく感じます。

【村上へのおもい 第2話】
越後の北の 米坂線よ 人目しのんだ 坂町の駅
瞳つぶらな おさげ髪 青い三日月 見つめてた
ああ初恋 心の町よ あの日あの時 帰りたい


 坂町は羽越本線と米坂線の交差するところ。若者たちのほのぼのとした青春を見守る交差点であってほしいという願いを込めました。
 また坂町が日本海の海の幸と山形県南部の大地の恵みの交流ゾーンとして発展していく意識的な取り組みも期待したいです。

村上へのおもい 第3話】
越後の北の 三面川よ 二人歩いた 川辺の小径
初めてふれた 細い指 青い三日月 震えてた
あゝときめき 心の町よ あの日あの時 帰りたい

 西朝日岳に源を発し、旧朝日村を横断し村上市街地の北端を流れて日本海にそそぐ三面川は、鮭漁はもちろん田畑と生活をうるおす母なる川です。
 三面川とその支流に沿ったたくさんの小径が、ときめきを包む市民のやすらぎの場になってほしいですね。

【村上へのおもい 第4話】
越後の北の 笹川流れ そぼふる雨に 霞んでた
二人寄りそう 傘の中 青い三日月 隠れてた
ああ青春 心の町よ あの日あの時 帰りたい


「松島はこの美麗ありて此の奇抜なし 男鹿もこの奇抜ありて此の美麗なし」
 頼三樹三郎のこの名句は笹川流れのすばらしさをズバリ言い当てています。
 過酷なシベリア嵐に耐え忍び抜いてきた奇岩と松、笹川流れはまさに自然界での堅忍不抜を体現した美しき名勝です。
 海府の海岸~山北の山々~朝日の山々を、自然と人とのふれあいそして伝承文化のゾーンとしてさらなる活性化を期待します。

【村上へのおもい 第5話】
越後の北の みなと岩船 沖の白波 連絡船
二人向かうは 粟島の浦 青い三日月 微笑んだ
ああ潮風 心の町よ あの日の時 帰りたい


 かつて野生の馬が住んでいた粟島は、私にとって夢の島です。
 行政的には村上市ではない粟島ですが、隣接する村として良好な関係を深めてほしいです。
 村上を代表する港町の岩船。粟島の玄関口として多彩な情報発信をお願いします。

【村上へのおもい 第6話】
越後の北の 湯のまち瀬波 二人見つめた 浜辺の夕日
ロマン広がる 水平線 青い三日月 うなずいた
ああ輝き 心の町よ あの日あの時 帰りたい


 村上市の海岸線はどこからでも美しい夕日を見ることができます。
 子どもの頃、夏になると毎日のように自転車で海水浴に出かけた瀬波温泉海岸が、2008年に「恋人の聖地」に認定されたと聞きました。
 夕日が沈むときのロマン広がる水平線を、市外、県外の多くの人たちに見てほしいです。

 この歌を発表した当初、岩船新聞にとりあげていただいたこともあり、何人かの市民の方から神戸の私に連絡をいただきました。
「参加するコーラスサークルで歌いたい」
「車で野菜を売っているが、この歌を流しながら移動したい」
等々の声に接し、村上への愛着を共有できた気持になりました。
 まだ『越後の北の』を聞かれていない方はぜひ https://www.youtube.com/watch?v=N5YA2ohK-g0 にアクセスしてください。
 これからも村上応援団として、関西の地で私にできることを精いっぱい取り組んでいこうと思っています。



渡辺 久
(わたなべ ひさし)
1967年 村上高校卒業
      神戸市在住








村高アマチュア無線局(JAΦYBK)の同学年の仲間たちと
向かって右・佐藤秀雄君(JAΦBTD)
中央・山下治郎君(JAΦBTE)
向かって左・私=渡辺久(JAΦBTC)

1964年撮影














三面川の鉄橋は風情あふれるトラス橋だった
1955年頃の撮影








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リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)
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