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   吉川真嗣・美貴の二人旅  No.3
                    
                      高 柳 町
                                    
新潟県高柳町
 

 「絵に描いたようなのどかな日本の田園風景」、こういう景色をお求めの方には、高柳町をおすすめします。



 おそらく季節季節、その姿形を四季を代表する究極の美にまで大きく変容させながら、それを見る人々に、人知を超えた自然のみが成せる、その偉大で厳然たる何かを感じさせることが、容易に想像できる。

 私たちが訪れたのは、夏も終わり二十四節気でいうところの、処暑の頃である。稲穂は天に向かって一様に規則正しくまっすぐとのび、陽光をやさしく浴びながら、時折風とたわむれ、静かに左右に首を振り、その様はまことのどやかである。
 そしてその田を囲むように、古い茅葺きの民家が連なり、環状集落を成している。このような形態の所は他に例が無い、景観上非常に貴重な集落なのだという。

 本当に本当にこんな所が実在したのかと、静かな感動をひたひたと感じながら、田んぼの脇道を通りながら、環状集落を方向を変えながら眺めてみる。どこから見ても、絵になり、サマになり、そこで暮らす人の生活をも含めて1つの完結された民話的な美の世界が、ここにはある。

 そして民家脇におそらく自家製の野菜や花を作っているのであろう。小さな畑に色とりどり花が愛らしく咲き誇り、緑一色の田園に彩りを添え、また畑になっている数種類の野菜が、その小スペースの中で実に様々の造形としての変化に富んだ楽しさを醸し出し、日々の暮らしの工夫が感じられて実に豊饒である。

環状集落からはずれると、道端に大きな樹が、晩夏のまだまだ強い光を遮ってくれ、その豊かにびっちりと枝を埋める葉は、この地にも長い人の営みと独自の山あいの歴史があったことを物語っているようでもある。
 
  この高柳では、茅葺き民家を一般の人たちがお宿として利用できるようにもなっており、ある一組のお泊まりの家族に出会った。食事は運ばれてくるが、それ以外見渡す限り田と山と茅葺きしか無い、というシンプルさである。おそらくこの家族もすべての雑踏と喧噪から抜け出て、美味しい空気を身体いっぱいに吸い、ひさしぶりに大きな空にのびをしながら木や道端の花と会話することに、極上のよろこびを見出すのであろう。地の人に聞くと、リピーターのお客様が多いのだという。現代人にとっては、まぎれも無く「癒しの地」そのものであり、なるほどとなっとくする。


環状集落の茅葺き民家

 「稲(いね)」とは「いのちのね」が語源だと聞いたことがあるが、この高柳はすべてを生かし、育み、再生させる、目に見えない「いのち」に満ち溢れた、温かで清やかな土地である。
 

昼食中の筆者

 横切る一匹の猫と、清涼な空中を飛んでいた一匹のトンボが、一人の人間と同じ程の存在感をもって感じられた高柳町へ、次は別の季節に訪ねてみたい。

会津名産
 本ぼうだら煮
 にしん山椒漬

 
福島県会津若松市相生町
 Tel 0242-22-2274

Tel 0242-26-5555


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