吉川真嗣・美貴の二人旅  No.9

       新潟市

 都市化したものばかりが目立ち、新潟市内で昔ながらの風情ある所というのは、なかなか思いつかないし、また見つけにくいのが現状である。
 ところが細かく歩くスピードで巡ってみると、意外や意外、いろいろと往時をしのばせるものが出てきて、奥の深い新潟市である。今日はその中の一つ、白山神社の境内の一角にある燕喜館(えんきかん)について少々書いてみたい。

 燕喜館は明治から昭和にかけて新潟の財界で活躍した斉藤家の邸宅の一部を、ここ白山公園に移築したものである。端正にして風格のある玄関を通り、奥に進むと、想像以上の広がりのある建物で、そこはお屋敷である。前座敷、奥座敷といくつものお座敷が続き目を引くのが天井に取りつけられた大型のシャンデリアである。和の空間に洋のものが実にマッチしており、双方が引き立っている。天井が高く白木の良さを活かし、木に詳しくない私でさえも、使われている材木の並々ならぬ上質さは見てとれる。柱に四方柾(しほうまさ)のものが使われているのを見るのは、思えば初めてだ。入っている建具や欄間も品格のあるつくりで、住まいというより、来客を大いに意識した高雅な雰囲気が漂う。

 通常、そこに人が住むことはなく、一般公開されている建物というのは、建物の立派さだけが妙に宙に浮き、殺風景に写るものだが、この燕喜館はなかなか迫力があって、楽しめる建物である。有料で呈茶のサービスがあるので、是非一服することをお勧めしたい。建物内を歩き回るだけでなく、一度座って腰を落ち着けて視線を落として今一度あたりをぐるりと見回してみよう。揺れ障子越しに見えるシダレザクラや灯籠の見飽きがこないこと!そして普段動きが無いと先入観を持っている石庭にも、じっと目を凝らすと風や遠くの物音と共鳴して、実に豊かな動きと表情があること!

 そして邸宅の敷地内は隅々までご覧になることを重ねてお勧めいたします。軒や塀など材木のあらゆる切り方、見せ方、使い方に改めて感心されることと思います。そう、燕喜館は「木」を堪能できる場所と言えるでしょう。
 併せて白山神社へのお参りは勿論のこと、擬洋館造りの県政記念館も散歩コースの一つです。ご参考まで!



燕喜館案内図

  
 
    


文・写真
      吉川 真嗣・美貴

   

燕喜館の門で(筆者)





おすすめ食事処
会津名産
 本ぼうだら煮
 にしん山椒漬

 
福島県会津若松市相生町
 Tel 0242-22-2274



和と洋の見事な調和の奥座敷



 

縁側からの燕喜館







表 紙 今月の目次 WEB情報 サイトマップ バックナンバー 検索・リンク