新潟動物ネットワーク  
No.216


カモへのエサやり、ちょっと待って!


冬になると新潟にはたくさんのカモやハクチョウが飛来しますが、この時期あちこちの池やお堀などでこれらの野鳥にエサやりをする姿を見かけることがあります。先日子どもたちを連れて公園に行ったところ、池のほとりで水鳥にエサをやっている高齢夫婦を見かけました。その夫婦は食パンを1袋ほど持っていたようで、それを自分たちであげるだけでなく付近の子どもたちにも配ってみんなでエサやりタイムという状況に。
子どもたちが身近な動物や自然にふれあうことで思いやりや優しさをはぐくむ、、、と言えば聞こえが良いかもしれませんが、このエサやり、本当に優しい行動なのでしょうか?


 



 実は野鳥など野生動物へのエサやりには様々な問題があります。

〇食パンやお菓子などの人間の食べ物は野生動物の健康に悪影響があります。
人間の食べ物でお腹がいっぱいになってしまった野鳥は水草など本来必要な栄養を摂ることができなくなってしまいます。また自ら活発に動き回ってエサを採ることもなく高カロリーな食べ物を食べ続ければメタボになって健康を害してしまいます。このような動物はエサをあげた人の見えないところで死んでいきます。

〇野生動物の習性にも悪影響があります。
仮に鳥に適したエサを与えたとしても、定期的に餌付けをされているような野鳥では自分で食べ物を探す能力や習性が失われてしまうこともあります。そうなると人間がエサをやらなければ餓死してしまうし、渡り鳥なのに渡りをしなくなって繁殖ができなくなったり、凍死してしまったり。人間に慣れすぎて容易に狩猟対象となってしまったりすることもあるでしょう。

〇生態系にも影響があります。
野生動物はエサの量や生息場所の取り合い、捕食者に食べられたり食べたりする中で自然に個体数が保たれています。しかし、人間が特定の動物にだけエサを与えれば数のバランスが崩れてしまいます。
また、カモが食べ残して水中に落ちたエサはコイなどの特定の魚だけを増やし、池の水を汚せば特定の藻類だけが増えるなど、水中でも生態系を狂わせ生物を苦しめることにもなります。

〇人間とのトラブルの原因となります。
人に慣れた動物は人間との距離感がわからなくなり、人里に近づき過ぎてしまいます。野鳥であれば糞や鳴き声による被害が出ますし、サルやイノシシによる農作物の被害も目立っています。
知床では旅行者が安易にエサやりをしたせいでヒグマが民家に近づいたり人間を襲うようになる事例が多くあります。こうなってしまったヒグマは殺すしかありません。
ちなみに先日の件でうちの子どもはカモに噛まれました。

〇動物から人に、また人から動物に、感染症が広がります。
カモなどの野鳥は鳥インフルエンザに感染していることがあります。これは人間にもうつる可能性があるし、靴などに付着して移動させてしまう場合もあります。万が一、ウイルスを養鶏場などに運んでしまうようなことがあれば何万羽というニワトリが殺処分されることになります。
新型コロナウイルスも野生動物に由来する可能性が指摘されていますが、ネコ科動物や類人猿など様々な動物に感染することも確認されています。
このほかにも狂犬病やエキノコックスなどたくさんの人獣共通感染症が知られています。

このように野鳥や野生動物へのエサやりの問題点は枚挙にいとまがありません。動物にとってメリットはほとんどなく、むしろ動物の命を奪う様々な悲劇の原因となっています。

 



 とは言え、(クマやキツネなどは論外ですが)カモやハクチョウなどへのエサやりは何十年も前から習慣的に行われ、時には美談として語られ、また時には地域活性であったり、教育上「良いこと」のように扱われたりしてきました。これを今すぐにやめてもらうというのは少し難しいかもしれません。私も子どもたちが「カモにあげてね」ともらってしまったら、やめてくださいとは言いにくいです。

なので、エサやりをしている人はまずは人間の食べ物ではなく野鳥に適したエサに切り替えてください。小鳥などは冬場にエサが不足することもあるのでそういった時期を調べて必要な季節に必要なだけのエサを用意してあげるのも良いかと思います。しかし、それも本来は必要ない場合がほとんどです。どうしても野鳥の存在を身近に感じたいということであれば、エサをあげるよりも庭に木を植えるのが良いかもしれません。環境を整えると様々な野鳥がやってきます。

余談ですが、我が家の庭には地域の自然環境を模した池(いわゆるビオトープ)があり、様々な生き物が訪れてきます。昨年この池のほとりでカルガモが営巣し、ヒナが産まれました。

 



 そしてもし機会があればここで読んだことを誰かに伝えてみてください。エサやりをしている方は親切心でやっていることが多いので強くは言いにくいと思いますが、折を見てやんわりと伝えられるといいなと思います。特に子どもたちにはぜひ知ってほしいです。日頃「お菓子ばかり食べたらダメだよ」と言われ慣れている子どもたちはなんとなくわかってくれるかもしれません。

そして、動物に近づきたい、エサをやってみたいと思ったら、ぐっと踏みとどまって、エサをやったり近づいたりするのではなく、よーく 観察してみてください。動物たちは自然の状態では何をしているでしょう?何を食べているのか?どうやってごはんを探しているかな?カモはよく見たら何種類いるだろう?オスとメスは模様が違うの?動物どうしで何かお話ししているかもしれません、家族かな?親子かな?楽しそうに遊んでる?いや、喧嘩してるのかな?じっとしている時は何してるんだろう?眠いのかな?などなど、ただ眺めているだけでもたくさんの発見があると思います。

興味が出たらいろいろと調べてみるのもいいと思います。図鑑など本を読むのもよいですが、インターネットにもたくさんの情報があります。「日本野鳥の会」や「愛鳥センター 紫雲寺さえずりの里」、「サントリー日本の鳥百科」など野鳥に関する情報を発信しているサイトがたくさん見つかります。身近な生き物のことでもまだまだわかっていないことも多く、知れば知るほど面白い世界です。


【野生動物はエサをやるよりも優しく見守る】
これが令和からの新常識になることを願っています。


新潟動物ネットワーク/猫班・学校啓発班・イベント班
遠藤 真太郎
令和4年1月1日


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