新潟動物ネットワーク  
No.180



テツ と ハチ に出会った日



8月の下旬、真夏の盛りに4匹の猫達が私の家にやってきた。

ある保護主さんからの代理保護を名乗りでたのです。

私は、今年のお盆に長年連れ添った愛猫を失い、重度なペットロスに陥っていました。
火葬を済ませたその数日後、ミケ(仮名)のことばかり考えてお通夜のような時間を過ごしていた時に、1通のNDN
スタッフメールに目を止めました。
「4匹の子猫代理保護者求む!」 のメールです。
いつか、愛猫の一生を見とどけた後は、行き場の無い猫達の保護活動に取り組みたいと考えていた私は、
このメールの数分後には「私が引き受けます!」 と返信していました。
子猫を4匹も受け入れる準備も何も考えないまま、あっというまに4匹がやって来ました。
4匹のうち、1匹はうちに来て早々に私の知人に里親が決まりました。     残り3匹・・・
私はこの子達との接し方に悩みました。
自ら重任である保護を引受けておきながら、3匹と素直に仲良くなることができなかったのです。
いつまでも考えるのは亡くなったミケのことばかりで、やんちゃな子猫のことを考えてあげることができませんでした。
自宅の2階の一部屋を猫達の専用部屋としており、朝出勤前と夜帰宅しての2回、ご飯の準備とトイレ掃除に
その部屋に入るだけで、ちっともかまうこと無く、おやつやおもちゃを買ってあげることも考えられませんでした。
理由はもうひとつあって、どうせ譲渡会で里親様が見つかれば、またこの子達と別れなければならないと思ったからです。
なので、名前も呼ぼうとしなかった。 
私はこんなに冷たい人間だったのかと今度は自分を責める日が続きました。
そんなとき、スタッフの同僚に聞いてみたのです。
里子保護をしている殆どのスタッフは、元々の家族である先住猫がいて、その他に里子保護を引き受けている
ようでした。
相談したスタッフは、「先住の猫も保護猫もどちらも大切です、初めて保護猫に里親さんが決まった時には辛くて
号泣しましたが、次から次へと救わなければならない保護猫がいっぱいでメソメソしていられないんです!」
なんとたくましい回答!
ある譲渡会会場でお隣になった保護者様にもお話を聞くと、やはり先住の家族猫がいて別部屋で里子保護を
しているとのこと。
「早く、いい里親さんにめぐり合ってもらわないと後がつかえているんです!」
自宅には先住猫2匹と保護猫が5匹だそうです。
これまたたくましい!
スタッフ間のメールは過酷な内容が多く、
傷だらけの猫、病気で目が開けられない猫、栄養不足でガリガリな猫、凶暴な猫、臆病な猫、
このような猫達を遠方まで捕獲器を持って、早朝や深夜に出かけて行く。
あげくには、地域関係者様から罵声を浴びせられることもあり、説得し、理解を求めて必死なのです。
そして、病気や負傷した猫を病院へ連れて行き、時には出会った命が失われるのを見とどけなくてはならなかったり。
でも辛いことばかりではないようで、傷だらけの汚れた痩せ猫を見違えるように回復させて無事優しい里親様にめぐり
会わせられる喜びも知っているのだと思います。
こんな過酷な現場や喜びを知らない私だから、初めての保護活動に対し甘えた戸惑いがあるのだと思います。
それでも、実際に現場を知らないし自分には割り切れない気持ちで戸惑いは解消しませんでした。





ある日、ワクチン摂取のために初めて猫達を連れて動物病院へと出かけました。
一番やんちゃで食いしん坊で甘えん坊なオス猫を診察台に乗せると、恐怖のあまりに全身ガタガタと震え出して
止まらなかったのです。
家ではご飯もガツガツ食べるし他の猫をなでようとしても割って入ってくるような積極的で行動力のある子猫の
予想しなかった光景を見た私は、この時「ギュッ」と胸をしめつけられる思いでした。

「自分はなんて器の小さい人間なのか・・この小さな命達が、今頼りにできる人間は私しかいないのに・・・」
なぜここにいるのか、なぜキャリーに詰め込まれるのか、なぜゲージに入れられるのか、なぜ注射を打たれるのか、
何処へ連れて行かれるのか、いつご飯が食べられなくなるのか、常に不安でいっぱいなはずなのに。

この子達の気持ちを考えず、自分が辛い思いをしたく無いことばかり考えていたことにようやく気が付きました。
今チビ達に人の愛情を教えてあげられるのは、私だけなのだと・・・
この子達の 人生・・・?  にゃん生・・・!? は私次第なのだと・・・

それからは、毎日チビ達に早く逢いたくて家路を急ぐようになり、私が家にいる時間の殆どは猫部屋を開放し、
リビングで一緒に過ごしています。
そして二人に名前もつけました。
やんちゃで食いしん坊君は「テツ」、
引っ込み思案なビビリ君はハチ割れの「ハチ」、
最初は保護を引受けた体でしたが、閉ざしていた自分の心を開放してからは、チビ達の笑顔に毎日励まされ、
結局チビ達に救われることになってしまいました。
初めてテツとハチが来てくれた日は、一生忘れることができない日となったのです。
これから里親様が決まるかどうか解りませんが、私を御通夜のような時間から救い出してくれたチビ達には恩返し
をしなくてはなりません。

忘れかけていたこと、猫達と私は対等であるということを思い出させてくれました。
いえ、猫の方が上かも知れません。 ただ居てくれるだけで人を幸せにしてくれるのですから・・・

皆さん知ってましたか? 
猫と暮らしたことのある方ならご存知だと思いますが、猫ってお風呂に入らなくてもいつも石鹸のにおいがするんですよ・・・ 
母親のようなにおいで、隣りに居てくれるだけで魔法にかかったように眠くなってしまうのです。
多頭飼育現場や野良猫の糞尿の臭いをイメージされる方も多いと思いますが、きちんと対等に暮らしていれば
シャンプーなんてしなくても清潔でいい匂いなんです。

チビ達といつか別れがくることを考えると切なくなりますが、テツとハチの幸せを第一に考えることと、これからも保護が必要な猫達を受け入れられる心の準備と環境創りをしたいと思います。


そういえば、3匹のうち1匹は、無事優しい里親様の家に引っ越して行きました。

テツ と ハチ に出逢った日は 8月21日です・・・


 


新潟動物ネットワーク/イベント班・猫班
浅見 清和
平成31年1月1日掲載

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